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「…お前は泣かないんだな」
睨んだ目をほんの少し穏やかにし、ポツリとつぶやく
言葉はわかっていても、まだ喋ることは出来ないからただ、笑いかける
「あ〜」
懐かれないから、というのもあながち間違いではなかったのかも知れない
父の目の奥には僕がいだいているような、なにか同じものがある気がした
綺麗で透き通っている青色をした目の奥には、暗くドロドロとしたものが淀んでいるようだった
深く、儚く、深い海の底にいると錯覚してしまいそうな…
抵抗も出来ず、足を絡め取られて海の底に沈まされていくような
拭っても拭っても、消えることはなくまとわりつくもの。
その間、レヴィ達は呆気にとられたままだったが、ハッとしてこちらへかけてきた
持ち上げられ、母に抱かれる
「あぅ?」
「も、申し訳ございません…!」
父に頭をさげ、僕がぶつかったことを詫びているようだ
胸の片隅に母に対する申し訳ない、という気持ちはあるが、大部分は父の事で埋め尽くされていた
母は、本気で父を愛しているようで、声からは嫌われたくないと思っているのが伝わってくる
けど、当事者になると分からなくなってしまうもので
きっと父もそうなのであろう。
愛されていても気づくことは出来なくて、一生を
海の底で過ごす
気づかせてあげたい
そう思った
誰かのために行動したいと思ったのは、これが初めてだった
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