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新学期(5)
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ロイヤルドルトンのティーセットで、アリスは慣れた手つきで紅茶を入れていく。フルセット10客のティーカップは、ひとつだけいつも使われずにいるのが可哀想だと、アリスは思っていた。もう一人いれば、このティーセットが全て使われ、完璧なお茶会になる。密かにあと一人仲間が増えてほしいと願っているアリスが、最後の一適をカップに注ぎ、それを理人の前に出す。
「ありがとう、アリス。いただきます。」
サロンにいる全員が座って、お茶会が始まった。
「これを飲んだら寝るんだよ?」
理人の隣に座る聖夜が、ソーサーに音もなくカップを置きながら言った。
「分かってる。」
少し不機嫌な感じで返事をした理人を見て、流生は笑う。
「理人さんって、紅茶の飲み方はthe貴族です、みたいな所作なのに、寝たくないって、なんか、かわいいですよねー。」
くすくす笑いながらそう言う流生を睨みつけ、理人はハーブティーを一気に飲み干した。
「紅茶じゃない。ハーブティーだ。寝る。」
完全に拗ねてしまった理人は、堂々と聖夜の太腿に頭をのせて背もたれの方を向き、布団をかぶった。ぐりぐりと聖夜の腹に額を押し付けると、ピタリと動きを止めた。聖夜が理人の肩に手をおいて、指で軽くトントンとしていると徐々に理人の身体から力が抜けていく。
「寝たかな。」
暫くして聖夜がそう言うと、鉄平はほぅと息をついた。他のメンバーも各々安心したように動き始める。
「流生、ナイス!ファインプレーだよ。」
4人掛けのソファに並んで座っていた流生の肩にポンと手をおいて、鉄平が小声で言うと流生は苦笑いした。
「俺、理人さんに嫌われてませんかねー。」
「はは。いつも、お前は損な役を引き受けてくれるからな。」
助かるよ。と潤に言われて、流生はより複雑な気持ちになる。
「流生、心配することはありませんよ。」
優しく微笑んで慰めてくれたのは、アリスだった。
「ほんとに?」
「ええ。理人様は、分かっていらっしゃいます。貴方がとてもお優しい方であるということ。」
「だといいんだけどなー。」
「お前は賢いがら、余計なことばぁり考えすぎよにゃ。なんしたって、理人はお前さ同じよーに接しでけっぺ?(お前は賢いから、余計なことばかり考え過ぎなんだよな。何をしても、理人はお前に同じように接してくれるだろ?)」
切れ長の目を細め、ニヤリと吹雪が笑う。
「確かに……そうかもしれないです。」
「んだべー。さ、わらわら始業式の準備すっぺさ。(だろー。さぁ、さっさと始業式の準備するぞ。)」
吹雪がソファから立ち上がり、ティーカップをソーサーごとローテーブルのトレーの上に置くと同時に、サロンの扉が外から開かれた。
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