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狐塚さんとの会話はテンポが良くて、とても心地がいい。いつもどこかにある寂しさを埋めてくれるような、そんな温かさがあった。
「ご馳走様でした~」
「全部食ったな。残したら来週はただ働きさせるとこだったわ」
「鬼~!でも狐塚さんの料理は本当に美味しいから残せって言われても無理~」
「ふっ。んじゃ、また作ってやらないこともない」
「いえ~い」
俺様だけど、なんだかんだ言って優しい。そして貴重な表情筋が仕事をしてるところを見れたのも嬉しい。もっと一生懸命仕事してくれてもいいのに。せっかくの男前なんだから。
「なんだよそんなに俺の顔を見て。惚れたか?」
「惚れた惚れた~。男前なのにめったに笑わないからちょっと笑うだけで破壊力抜群で~す」
「お前はずっと笑ってて疲れねぇのかよ」
「何で笑ってて疲れるんですか~。笑ってると元気になりますよ~」
「だってお前の笑顔は偽物じゃん」
「あはっ、よく言われます~」
「…よく言われんのかよ」
偽物、ね。確かに偽物だ。別に笑うことが嫌いなわけじゃない。けれど俺は笑うために生まれたんだと思えば勝手に笑ってる。負の感情を俺は持たない。
「凪の本当の笑顔をいつか見てみてーな」
そう言って小さく笑った狐塚さんの言葉。聞き覚えのある、いや聞いたことはないか。見覚えのある、だ。見覚えのある言葉を聞いたとき、少し心が揺れ動いたような気が、した。
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