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頭の上にのしかかってくるような低く厚い雲の下を通り抜け、4度目のドアを押し開く。家を出たときは大丈夫だと思っていたけど、夕方には雨が降るかもしれない。傘持ってないけどどうにかなるよね。
曇り空とは関係なくいつでも仏頂面の狐塚さんい挨拶をすませ、今日も元気に仕事をしよう。仕事をしている間は、矢のように時間が過ぎて行ってくれる。嬉しいような嬉しくないような。
「凪」
「なんですか~」
開店5分前になって、狐塚さんが俺を呼んだ。返事をしながらキッチンにいる狐塚さんのもとへ行くと、何故かじっと見つめられた。え、なにこの人。俺食べられそう。
「…どうしたんですか~?」
「元気ないな」
「え?」
「いつもヘラヘラしてるし今日もヘラヘラしてるけど、今日のお前はなんか違う。俺をなめんなよ」
「いやいや、狐塚さんをなめたことなんてないですよ~」
「はぐらかすな」
突然何を言い出すのかと思ったら、意味の分からないことを言われた。元気がない?俺には最初から元気も勇気もないですよ、アンパンマンじゃないもん。
「顔色、悪い」
眉間に皺を寄せた仏頂面なのに、その瞳にはどことなく心配という感情が含まれているように見えるのは気のせいだろうか。どうかその感情はしまってください。俺には必要ない。
その願いも空しく、さらに狐塚さんは美味しいイタリアンを作る手を俺の頬に伸ばした。反射的に半歩後ろに下がって距離をとってしまう。するとその行動が気に食わなかったのか、狐塚さんは強引にその距離をつめて、今度はしっかりと俺の頬に手を合わせた。
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