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心臓がすごく波打って、胸がグッと盛り上がったり、グッとへこんだりを繰り返している。苦しくて離れないと心臓が持たないと思うのに、ずっとこうして近くにいたいという相反する思いがぶつかり合っていた。
「凪、好きだ」
「…っ!」
「お前は?俺のこと、どう思ってんだよ」
「それ、は…」
「俺の胸、どうなってるか分かるか」
手のひらを狐塚さんの心臓の上にくっつけられる。伝わってくる振動は俺と同じくらい早くて、狐塚さんと俺は今、同じ気持ちなんだと理解した。
「凪と同じ早さだろ?」
「はい…」
「言ってくれよ、凪。俺のこと、どう思ってる?」
両頬を包まれて、おでことおでこがくっつく。その距離で囁かれるように問われたら、もう逃げ道などなかった。ずっと言いたかった。
「…好き…っ」
言いたくて言いたくて、言えなかった言葉。やっと直接言えたことの安堵からか、緊張が一気に解けたからか、俺の目から一粒二粒と涙が零れた。
「凪…!」
「んっ」
待ち焦がれた、キス。熱い唇の感触が火花のように全身を貫く。空気すら入る隙間がないようにピッタリと唇と唇をくっつけて、深く舌を絡ませる。俺の涙が頬を伝って落ち、しょっぱさが口の中に広がった。
狐塚さんは、気付いていない。さっきの俺の“好き”が5年分の“好き”だということに。
吐き出したかった。文字ではなく、口から言葉で吐き出したかった。あの人の面影をどこか似ている狐塚さんに重ねて。狐塚さんをあの人だと本気で思い始めていた俺は、頭も心も麻痺していた。
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