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ソファと俺の体の間に腕は回り、端正な指が俺の背中を優しく這っていく。まるでそこに隠された水路を辿るかのように。それと同時に、俺の体は無数のソーダの泡粒のようなものが、全身の皮膚を逆撫でに走り抜けた。
長い長いキス。お互いの唇がN極とS極のようにピッタリとくっつき、離れる気配がない。狐塚さんの背中から腰にかけてのムチのような、強靭でしなやかな線を指で辿る。
「はぁ…っ」
熱い息を漏らした狐塚さんの表情は、完全に欲情しきった獣のようで。ゾクリと期待にも似た快感が目の前を通り過ぎた。
「凪…凪…」
「んっ、狐塚、さん…」
「名前」
「え…?」
「俺の名前を呼べ」
長かった梅雨が終わるように俺たちのキスの雨が止み、至近距離で狐塚さんがまっすぐ俺を見下ろしながら命令する。狐塚さんの言うことに、逆らってはいけない。
「……遼哉、さん」
「凪…!」
狐塚さんの下の名前を呼んだのは、初めてだ。キスに酔いしれた思考は、いつもの恥ずかしさを麻痺させ、自然と俺の口から零れた。呼んでみれば、ずっと探していたパズルのピースがようやくハマった時のように、舌に馴染んだ。
名前を呼ばれたことが余程嬉しかったのか、さっきよりさらに激しいキスが降り注ぐ。舌を絡ませ、吸われ、唾液を流し込まれ。息をするのも一苦労なキスは、それでも俺の心に絶対的な幸福感をもたらした。
遠くで、お祭りの喧騒が聞こえる。外を出れば大勢の人がいるというのに、この部屋には俺たち2人だけ。2人の世界は切り取られた箱の中、妖艶な空気に包まれていた。
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