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射精のあとの気だるさが、俺の体を薄い膜のように包む。心臓が肋骨を持ち上げるくらい激しく動いている。凪の腹に無造作に散らばる白濁を見て、一緒にイケたことに安堵した。
「大丈夫か、凪…」
「は、い…」
「すげぇ、気持ちよかった」
「…俺もです」
本当は痛みの方が大きかっただろうに、そう言ってくれた凪の瞳には大粒の涙があった。この時は凪の涙を、痛みと俺と繋がれたことの嬉しさからくる涙だと信じて疑わなかった。何も、疑問に思わなかった。
いつでもヘラヘラと笑っているポーカーフェイスの恋人に、何か背負っているものがあることは最初から分かっていた。それを一緒に背負いたい、俺なら背負ってやれると思っていた。
なかなか自分のことを話したがらない凪を問い詰めれば逃げられるだろうと、凪から話してくれるまで気長に待つことを選んだのも間違っていなかったと思う。
高校生という思春期の中で、きっと他人から見たらそこまで大したことがないことで悩んでいるのかもしれないと少し軽く考えていたのも事実だった。俺に話してしまえば、どうにでもしてやれるという圧倒的な自信だってあった。
なぁ、凪。この世には誰にもどうすることも出来ないことだって、あるんだよな。それをお前はずっと分かっていたんだよな。だからこそ、お前は最後の最後まで事実を俺に話せなかったんだな。
神様という存在しているのかしてないのかもあやふやな名前に言うとしたら、どうして俺と凪を出会わせたんだと問いたい。
最初から消えるものだったのならば、最初から存在しないものだったのならば、俺たちの恋はどうすればいい?こんなにも、愛しているのに。
もっと早く、気付くべきだった。こんなに苦しくて苦しくて焦がれるくらいなら、本当の恋を知らなかった頃に戻りたい。戻りたいけど戻りたくない。だから、苦しい。
凪と初めて体を繋げた頃の俺に、凪の涙の理由を何が何でも聞けと、今の俺は叱責するだろう。
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