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奪い合い
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春の暖かさがだんだん夏の蒸し暑さに変わってきた。
腕まくりをしている人が多いのは、この初夏の暑さのせいと、明日の準備で忙しいからだ。
そう、いよいよ明日は文化祭、明後日は体育祭と後夜祭だ。
今日の午後の授業、5限6限はどの学年もその準備だ。
といっても、僕のクラスは教室を暗幕で暗くして飾りわつけるだけ、1時間もあれば終わってしまった。
あまりの時間で体育祭の練習をしようということになって、校庭に集合させられたけど、僕が出るのは玉入れ一種目だけ
練習なんかしようがないし、、、という話になり、幅跳び
の距離や走る種目の計測係
まぁこれもこれでいいけど
「あれ、誰かバトン知らない?」
リレーの選手が倉庫から顔を出してみんなに尋ねた。
「倉庫の中にないの?」
僕も含めて、5人ほどで倉庫内を探すもバトンは見当たらなかった。
『ひょっとしたら、体育館の方にあるのかも!取ってくるよ』
「おお、悪りぃなー」
別に校庭から体育館までは近いし、鍵は一日中空いているからさほど面倒ではない。
体育館についてドアを開けると、そこに見覚えのある人物がバスケットボールをついていた。
『真壁、何してるの?』
「あんたこそ、優等生の癖にサボり?」
『違うよ。リレーのバトン取りに来たの』
サボりって、サボってるのはお前だろ。
僕は倉庫の中にあったバトンを見つけ、真壁に嫌味を言ってやろうか考えた。
「真琴リレーでるの?(笑)」
真壁が半分驚き、半分嫌みたらしく聞いて来た。
今、僕が真壁に嫌味を言ってやろうか迷っていたところなのに、先を越された。
まぁリレーなんて花形確かに僕には勤まらないけど
『違うよ。代わりに来ただけ。真壁は何でるの?』
運動できそうだもんな。
それこそリレーとか、走る系に出るんだろうな
「100メートル走」
やっぱりな。
運動できるやつは体育祭ではヒーローだよな
「なんだ。じゃあ俺とは違うな」
真壁と話をしているの、僕の後ろから礼央が声をかけた。
いつからいたんだろう。
「真壁と対戦できるかと思ったけど、俺は1500メートル走に出るから」
「今対戦しなくてもそのうちすることになりますよ」
ん?
そのうち対戦することになるってどういうことだろう。
部活は同じチームだし、、、
って、そんなことより、なんでこの2人はこんなに険悪な雰囲気なんだ。
下駄箱で会った時といい、今日といい、同じ部活なんだからチームワーク大丈夫か。
「真琴、バトンあった?早く戻ろう」
礼央が僕の左手を引っ張り校庭に連れて行こうとする。
特に抵抗することなくついて行く
はずだった
「礼央先輩代わりにバトン届けてもらえませんか」
礼央に手を引かれ動いたはずの足が止まった。
今度は真壁が僕の右手を掴み、自分の方へ引っ張った。
真壁に手を引かれ、思わず立ち止まってしまったが、礼央の手もまだ僕の左手を掴んだままだ。
「真琴はまだ授業中だ、1人置いてくわけにはいかないだろ」
「授業って、ただ体育祭の練習じゃないっすか、しかも真琴、ほとんど雑用じゃん」
な、なんだこの状況。
僕を縄にして礼央と真壁で綱引きしてるみたいになってるんですけど、、、
「俺、真琴に少し用事があるんですよ」
「そんな急用か?違うなら後でもいいだろ」
「礼央先輩、真琴は礼央先輩の所有物じゃないんですよ。ただの幼馴染なんだから」
真壁が礼央を睨みながら言った。
その言葉に礼央はしばらく黙り込んで
「違うよ。もっと特別」
え?
「真琴はもっと特別」
礼央が僕の目をまっすぐ見て言った。
真琴は特別だと前にも何度か言われたことがあった。
幼馴染で親友で兄弟だと
でも今の特別はなんだか、、、、
「授業中だ、戻ろう真琴」
礼央が僕の手を引っ張ると、意外とあっさり真壁は僕の手を離した。
少しホッとしたような感覚になる。
僕らが体育館のドアを開け出ようとした時
「あまり中途半端なことしない方がいいですよ。彼女もいるんだし」
真壁が僕たち、というより礼央を睨みながら言った。
「そうだな」
礼央は真壁に笑顔で返していたが、目の奥は全く笑っていなかった。
僕は2人の会話は訳がわからないと思いながら、さっきの礼央の[特別]という言葉を考えずにはいられなかった。
ひょっとしたら、礼央の中で僕の存在が大きくなっているのかもしれない。
そう思いながら、礼央の後をついていった。
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