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大好きな声
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***
この部屋に入ってかれこれ
2時間くらいは立つかな。
一向に先が見えない父さんのお説教のような
ものを聞かされ続けてる。
まぁ、昔からそういう人だけど。
それでも怒られる時は…兄さんがよく
庇ってくれたっけ。
それで次は兄さんと父さんが喧嘩になって…。
俺は視線を父さんの座っているソファの奥にある
ガラスの戸棚に向けた。そこにはたくさんの
写真が飾ってある。その中の1つ、
12歳くらいの男の子と6歳くらいの男の子二人が
木の前で手を繋ぎ微笑んでいる写真。
俺の1番のお気に入りだった。
「……で、………だからだ、まったく。
お前にアーサーの二の舞はごめ…
エリック、エリック!!」
「へ?あぁ、はい」
やばい、聞いてなかった。
俺の様子に父さんははぁ。と溜め息をつき、
ソファに全体重を預けた。
「お前にはアーサーのようになって
ほしくないんだ…。一流の大学に行き、
一族の者同様、一流の仕事に就く。
これ以上の幸せがどこにあるというか?
いいかエリック。私はお前の幸せを願って
こう言ってるんだ」
「高校を卒業したら…帰ってこいってこと?」
「エリック、私は6年間もお前を自由に
させてやったんだぞ?
もうふざけるのもいい加減にしなさい」
ふざける?何が?
行き場のない怒りのようなものを感じた。
わかってない。
本当に、父さんはわかってないんだ。
「お前には将来が約束されている。
一流の大学を受けることもできるし、
一流の仕事に就くこともできる。
そして婚約者もい…あぁ、あの女性のことだが……」
シュンのことが話題に上がり
ビクッと肩が跳ね上がる
「交際しているにせよ、
あんな一般人は認めない。お前には
シャーロット嬢がいるんだぞ?それになんだ?
イギリス人ではないし、英語も片言ではないか」
シャーロットとの婚約は親同士が勝手に
決めたこと。俺はシャーロットを
ただの兄妹のようにしか思っていない。
それに、シュンがあまり喋らないようにするって
事前に打ち合わせをしていたから。
でも俺は
何一つ父さんに言い返せない。
小さい頃から、親に逆らうことは
許されないと思っていたから。
俺は……そんな自分が、本当に嫌になる
「どうせ、製菓学校といってもただの
ままごと遊びだろう?そんなことで貴重な
6年を無駄にするなんて……「父さんっ!!!」
ままごと遊び?
違う
遊びなんかじゃない
本気だ
本気なんだ
作ることの1分1秒にすべてをかけてるんだ
どう、伝えればこの人は
わかってくれるんだろう…!
考えを巡らせていると
コンコン
と扉が叩かれた
「おじさま?ティータイムにしませんこと?」
叩かれた扉の向こうからシャーロットの声が
聞こえた。父さんは一瞬顔をしかめたけれど、
「そうか、入りなさい」とだけ言った。
静かに扉が開かれ、シャーロットが
シルバーのトレーを持って入ってきた。
…え?シャーロットが?
あの、シャーロットが??
典型的なお嬢様気質で雑用なんて
絶対にやらないタイプのシャーロットが?
父さんも同じように思ったらしく、
驚いたのか少し口が開いていた。
シャーロットはトレイに乗せられたお皿の上に
謎の球体が乗った物と、湯気の立つ紅茶を
俺と父さんの前に置いた。
「私、こんなメイドの真似事、
嫌だと言ったんですのよ?でも、あの人が……」
シャーロットはそう言いつつも、
言葉に嫌そうな感じはなかった。
むしろ、喜んでいる気がする
あの人……?
俺はお皿の上の茶色のボールを見た
チョコレートだ
もしかして…⁉
「お前が持ってかないと俺が一々
戻る羽目になる。
そしたらチョコレートが冷るだろ。」
大好きな声がする方を見る
そこにはシュンが、いつものシュンが、
何故か、もう着替えちゃってるシュンが
チョコレートの香りが漂う湯気の立つ深皿を
持って、開け放たれた扉の前に立っていた。
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