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リベロとして
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翌日の試合形式の練習から日向はBチームに入ることになった
「鵜飼さんっ」
俺はニッと笑って鵜飼さんをみる
「なに企んでるんだよ。綾斗」
「俺、Bチームのリベロに入ってもいいですかー?」
鵜飼さんの首がうなだれた
「はぁ、駄目だって言ったってどうせ入るんだろ」
「ふふん」
「たく。その代わり、ちょっとでも違和感を感じたらやめる事。あと、無茶なプレーも禁止。いいな」
「はーい」
俺は元気よく手を挙げBチームの方へ行く
「田所やたら機嫌よさそうっすね」
「だな。本当に好きなんだな」
「少し気持ち悪いですねぇ。あんな綾斗さん」
田中、大地さん、蛍の会話が聞こえてくる
でも蛍の言い分が気にならないほど俺は今ホントに機嫌がいい
もう何年ぶりかというくらい久しぶりなんだ
バレーをやるの
こんなに楽しみなのはバレーを始めた頃以来じゃないだろうかって位に
「スガさんよろしくお願いします。でね」
俺の企みがスタートする
やっぱり中と外では見える景色が違うな
けど、俺はお前らより少し長く”外から”烏野というチームを見てきたんだ
得意コースも苦手コースもAチームだろうがBチームだろうがちゃんと知ってる
その俺がリベロにいてボールを落とすはずがないだろ
なんて内心かっこいい事思ってはいるが、ブランクってのはやはりあるわけで思ってるように体は動かない
それでも
「あやとぉーーーー!!」
スガさんがファーストタッチの時、俺がアタックラインぎりぎりで踏み切り上げる
この連携だけは俺の企て通りにいった
俺はみんなとハイタッチし敵コートにいる夕に指差した
お前もやってみろ、これくらいと
side 鵜飼繋心
やはり流石と言わざるを得ない綾斗の動き
リベロとしての読みもそうだが、多分あれは全員の位置を把握して動いている
あれでブランクあるとか信じられねーわ
スパイカーが打つ瞬間まで一切存在感がないのに次の瞬間にはボールの真正面にいて
抜け道に打っているように見えて本当は綾斗に誘導されている
多分、中にいるあいつらは気がついてないだろう
身長が多少低かろうがセッターに使いたがるわけだ
俺だってそう思う
人づてに聞いてはいたが実際目の当たりにすると恐ろしい
マムシといわれ、悪魔の頭脳と称賛されるのがわかるわ
本人に聞けばほぼ全てが統計に基づいているっていうが
もしそうなら、あれを瞬時に計算して導き出しているという事
誰が出来るんだよ。んな事
でも、そんな事より今の綾斗は初めて会った時には考えられないほど生き生きとしている
「お、やってますね」
武田先生が入ってきた
全員が気がづいて挨拶に来ようとしたが、それを先生が止める
「田所くんやってますね」
「あぁ、本人の希望でリベロに入ってる」
「リベロと言うことは、西谷くんと同じポジションですね」
先生は綾斗を目で追う
「それにしても田所くん、本当に生き生きしてますね」
「こっちが怪我しないか心配なくらいだよ」
「でも本当によかった」
「先生?」
「やりたい事を諦めていた田所くんが今、やりたい事をやっているんです。教師としてこんなにうれしい事はないですよ」
先生は満面の笑顔で俺をみた
「フンッ。だなっ先生」
1セットが終わり、平然と2セット目にも入ろうとしている綾斗を俺と先生で抑える
もちろん説教つきで
ぶーぶー文句を言っていた綾斗だが、多分もう立ち上がるのも一苦労なのだろう
壁に凭れ掛かるようにして座りタオルを頭にかけたまま荒い息を繰り返している
ボトルを持っている両手が震えているのが見えた
体が思ったように着いて来ないから無理をしたんだろう
今日は車で送って行ってやろう
座っている綾斗をみて俺はそう思った
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