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朝、まだ朝日が登るより前。
ようやくあたりが明るくなってきた頃、藍川の家の前へ車を止める。
思ったより遅くなった。
「…吉田さん、俺も…!」
「お前はそこにいろ。車から一歩も出るな。」
「でも、…一人より二人の方が……」
「俺が30分しても出てこなかったらここから逃げて警察を呼べ。そうじゃない限りすぐに出てくる。」
「…わかりました。」
流石に一人で来るのは命の危機を感じたため、傷付いた藍川に一番必要なケア要因を連れてきた。
アイツはあれだけ会うのを拒んでいたがこんな状態ならその記憶も飛んでるだろう。
小波を一人車へ残し鍵を開け扉を開く。
…生きてろよ、藍川。
ゆっくりと廊下を進んでいくと、奥の方から悲鳴にも似た掠れた叫び声と時々嘔吐く用な声が聞こえてきた。
信じたくはないが藍川のものだろう。
「誰かいる?」
「…ちっ、……」
バレなかったらラッキー、なんて生半可な気持ちできたがあの人がそんなに甘いわけがない。
仕方なく腹をくくってリビングの扉を開く。
ソファの向こう側にあの人の影が見えるが藍川自体は声だけで姿は見えない。
「…やっぱりあんたか。」
「そんな犯罪者を見る目でこっちを見るのはやめてくれます?俺はこの子の立派な保護者ですが。」
「残念だがうちで雇ってる以上俺の駒だ。これ以上の介入は法に触れる。」
あんまり相手を刺激したくはない。
…今は、いち早く藍川を救出しないといけない。
ここはハッタリでもその場しのぎでもいい。
「何もしてない、と言えば?」
「悪いがこの部屋にはカメラが5台ある。その内容もバッチリ撮らせてもらった。警察に出せばただじゃすまないな。」
「……この子は、…」
「条件は藍川の解放だ。今すぐこの家から出ていけ、いや。藍川さえいなきゃお前はこの家に興味はないだろ?藍川を渡せ、それだけだ。」
「あぁ、…そうですね。」
藍川にとって絶対的な存在のこの"先生"もそんなに頭は良くない。
適当な嘘で黙せるくらいには頭が悪いやつだ。
それにやっている事自体は犯罪だ、下手すれば警察にお世話になるかもしれない。
それくらいは理解しているらしい。
「そのままそこからうごくな。」
そう言うと男は一歩下がり、刺すような目で俺を見たが何も言っては来なかった。
シンとした部屋に藍川の呻き声だけが響くのは滑稽だ。
俺はソファの向こうを覗き込み絶句した。
「…藍川。」
両手足を拘束され、目も口も耳元塞がれた姿は人間の姿とは思えなかった。
ガクガクと体が痙攣してはいるが衣服自体は乱れてはいない。
手脚が真っ白になっているあたり数日間はこのまま動けてなかったんだろう。
「なぁ、あんた。コイツにどんだけ執着してんだ?」
「…その子には、俺だけでいい。」
「そう本当に昔から思っていたなら馬鹿はあんた
の方だと思うぜ。頭冷やして人生やり直してこい、馬鹿が。」
そっと藍川の体を抱き上げる。
不健康なくらいに痩せ細った姿は目も当てられない。
抱き上げた瞬間、恐怖を感じたんだろう。
藍川が最後の力を振り絞り、首を小さく振った。
聞こえていない、そう分かっていても
「…お前は、優しい子だ。幸せになれる。」
と
何故か囁いていた。
こんなになるまで 助けてやれなくてごめんな。
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