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CAGE1:それは奇妙な巡り合わせ36
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『あ、もしもし?』
聞こえてきたのは少し上擦ったような声。
『立花ですけど…』
「…知ってる。」
緊張していることが窺えて、思わず口角が上がってしまった。
『えっと遅くなってしまってすみません。ちゃんと体力も回復したので、そちらに合流しても良いでしょうか?』
「ああ、雪見のアパートで見張っている。特に動きはないから、慌てず来るといい。」
『分かりました。』
そのまま電話を切ろうとした矢先、クスクスと電話越しに笑う声が聞こえた。
「…………何を笑っている?」
『ふふふ、すみません。何だか電話越しに聞く倉橋さんの声がいつもと違って。……優しくて温かくて落ち着く声です。普段はクールな表情ばかりなので、そっちに気を取られてしまってましたが……こういう発見もあるんですね。』
今までそんな事を言われたことはない。
反応に困り、少し固まってしまった。
「……電話で聞こえる声は本物の声じゃない。」
『はい、知っています。でも話し方は倉橋さんのものですから。』
それでは、と電話は切れた。
通話を終えて暫く、手の中のスマホを見つめた。
笑っていた、楽しそうだった、嬉しそうだった。
………どうして、こんなに胸が熱くなる?
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