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CAGE3:少年の記憶と過ち48
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「でもっ…だけどっ…アイツが………二人を、消すって言うから……っ」
僕の隣に居た笠見さんは溜め息と共に頭を抱えた。
「だからっ……」
「……分かった。分かっているから、もう何も言わなくて良い。」
「うっ……うぅ……」
とうとう本格的に泣き出してしまった暁斗くんをあやすように、倉橋さんの手は優しく背中を撫でていた。
「ごめんな…守ってやれなくて。」
それは倉橋さんの言葉であり、僕の言葉でもあった。
何より同じ道を歩かせたくなかった。
この子は僕らのせいで、僕らと同じ道を歩んでしまう。
それが悔しくて、悲しくて、神様が嘲笑っているかのようで。
僕は何も言葉に出来ず、ただ二人の姿を見ながら、心でごめんなさいと呟くことしか出来なかった。
「……あの日と一緒だな。」
ふと隣の笠見さんが呟いた。
それは僕にしか聞こえないぐらい小さな声。
「血に濡れ佇む姿、あの日の倉橋 洋を見た気分だ。」
「………………」
笠見さんも二人に目を向けつつ、何処か遠くを見ているようだ。
それからゆっくり二人に近付いていく。
「どんな理由があれ、罪は裁かれる。」
倉橋さんが暁斗くんから身体を離し、笠見さんを振り返った。
「君達ならよく分かっているだろう?」
「…………………」
倉橋さんは応えることなく、もう一度暁斗くんと視線を交わした。
「洋兄ぃ………っ」
「大丈夫だ。暁斗、お前は一人じゃない。俺も立花も味方だ。」
「……うん」
「幸せにすると約束した。その依頼はまだ終わってない。例え一生を掛けても必ず遂行する。」
「うん……っ」
「だから少しだけ、もう少しだけ頑張れるか?」
「………頑張るっ」
「……そうか。偉いな。」
ボロボロと溢れ落ちる涙を拭うことはなく、大きな倉橋さんの手は暁斗くんの頭を撫でた。
「…楠木暁斗、殺人現行犯で逮捕する。藤堂!さっさと本部に連絡しろ!」
笠見さんは暁斗くんの腕を掴むと部屋の外に居た藤堂さんに怒鳴る。
暁斗くんが部屋から連れ出される直前、僕は彼の手を取った。
「直兄……」
「……外は寒いですから、これを。」
鞄から取り出したのは玄関に落ちていた手作りのマフラー。
「え……でもこれは……」
「それはね、暁斗くんに作っていたんです。こっそり二つ作っていたんですよ。形は歪ですが、寒さを凌ぐぐらいは出来るはずです。」
「……うんっ。温かいよ。ありがとう!」
涙に濡れた顔、それを最後に暁斗くんは笠見さんに連れられ、車へと乗り込んでいく。
「これから多くの警察が来る。巻き込まれたくないなら早く立ち去ることだ。」
笠見さんの言葉を残し、車は走り去っていく。
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