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罠
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五限目の真っ只中、きまぐれにも旧校舎の中庭に来る人間がいるのかと驚き振り返る。
そこに居たのは、
「いつも弁当だったよね?」
時が止まったように感じた。
それほどに今この場面が理解出来なかった。
あんな事があったにも関わらず、いけしゃあしゃあと微笑み話しかけてくるアイツ。
弁当を作ってくれる人をお前のせいで失ったというのに。
「…授業中だろ。何でこんなとこいんだよ」
四日前のことだというのに、自分のしたことを忘れたとでもいうのだろうか。
何故今、自分に話しかけることが出来るのかさっぱり分からない
「毎日一緒に食べてた友達は?今日は1人なんだ?」
読めない笑顔で話しかけてくるアイツ
降りしきる雨が制服に染み込み、重くなっていくのを感じていた。
「ふざけんな。誰のせいだと思ってんだよ」
母が狂ってしまったのも、友達を無くしてしまったのも、
「さぁ、誰のせいなんだっけ?」
「ッお前のせいだろうが!!!!お前のせいでこっちは全部失ったんだよ!!!!」
全部お前のせいで、お前になんか関わらなければ、
お前なんか好きにならなければ
この数日で、何度後悔したことか分からない。
思い出さないように、そう努めていても考えてしまうのはそのことばかりだった。
お前に裏切られ、友達を失い、親にすら見捨てられた
胸倉を掴みあげ怒鳴る俺の手を包み、グッと顔を近づける。
満足気に頬を吊り上げるアイツ
「なぁ、それ、ほんとに俺だけのせい?」
〝よく考えてみてよ〟
そう言ってアイツは、ずぶ濡れになってしまった俺を見つめていた
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