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全てのはじまり
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希望に満ち溢れた春。
新しい出会いの始まり。
この世界に生きる全ての生き物が活気づく麗らかな季節。
だからこそ新鮮な出会いに期待した俺はけして間違っていないだろう。
そう、この時の俺は失念していたのだ。
ここが小等部から大学までのエスカレーター式の学校であると。
特に中等部と高等部は同じ敷地内にあり、ともに全寮制であると。
しかもその6年間は滅多なことがない限り部屋替えがないことを。
春の陽気に少なからず浮かれていたとはいえルームメイトの名前を確認せずに玄関ドアを開けたのは確実に俺の落ち度だった。
もう少し冷静な頭を持ち合わせていたのなら事前に奴に連絡するなりしてこの状況を回避できたはずなのに。
「あっ・・・・やぁ・・・・そこ僕弱いのっ」
「ん?そんなに気持ちいい?ここ」
「やぁぁぁぁぁんっっっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・おい」
「えっ、やっ、きゃっ、立嶺様っ!!」
「・・・・・あれ?大和じゃん。久し振り、元気だった?」
きゃっ、って女子か。
手で前を隠しているつもりらしいが、お前が本当に隠すべきとこはそこじゃないだろ。
後ろの俺からしたらばっちり見えててそれ全然意味ないからな。
つか、てめぇも『久し振り』じゃねぇよ。
俺が来ること分かってただろぉが。
帰ってきて早々玄関で男同士の情事、いや男同士ってのが問題じゃない。
ここにいれば男同士の絡みなんて嫌というほど目にする。
そもそも青春真っ盛りの男子を中高一貫の、しかも全寮制の学校に閉じ込めたらどうなるか。
周りにいるのはいつだって男。
職員だって皆・・・・・・あ、食堂のおばちゃんがいたわ。
すまんおばちゃん。
いつも美味しい料理ありがとう。
心の中でおばちゃんへの謝罪と感謝を述べたところで改めて目の前の状況を確認した。
玄関先で同室者である嵐山清都の腰の上に小柄な男(つか去年同じクラスじゃなかったか?・・・・・名前なんだっけ)が乗り、その腰同士はしっかり密着してて、慌てた男が身体を動かす度にクチャクチャと生々しい音がする。
馬鹿だろこいつら。
そもそもなんで新学期前日にヤルわけ?
しかも玄関で。
ヤルならせめて自分の部屋でヤれ。
・・・・・・やっぱヤるな。
この部屋では絶対にヤるな。
「ぇ、あ、あ・・・・・っごめんなさいっ!!!」
慌ただしく周りに散らばった服をかき集めてドタドタと出ていく男。
つかほぼ全裸だったけど大丈夫か?
部屋に帰るまでに誰かに会ったらそれこそ悲惨な思いするよな。
まぁ俺には関係ないけど。
それにそもそもの問題はこいつだし。
「清都、お前いい加減にしろよ。帰って早々知り合いの情事を見せられる俺の身にもなれ」
「大和」
「だいたいお前は」
「大和」
「・・・・・・・・」
「おかえり」
「・・・・・・・・」
「おかえり」
「・・・・・・・・ただいま」
玄関に座ったまま服の乱れもそのままにはにかむように笑う。
言いたいことは色々あったが全部どっかに飛んでった。
結局のところ俺はこいつにはどう足掻いても勝てないらしい。
この笑顔を見る度に心底弱いと自覚する。
そんな俺の気なんて知らないこいつは俺の返事に満足げに笑うと、
「けっこう可愛い子だったのに残念」
あからさまにがっかりした様子で脱ぎ散らかした服を拾い集めながら部屋へと入っていく。
きっとシャワーでも浴びるんだろう。
はぁ、俺も荷物の整理でもするか。
靴を脱ぐため一度鞄を床に置く。
ずっと感じていた肩の重みからやっと解放された右肩をぐるぐる回す。
なんで自分の寮部屋に帰ってきてまでこんなに疲れなくちゃならないんだ。
それもこれも全部あいつのせいだ。
とりあえず荷物の整理でもするか。
ついさっき下ろしたばかりの鞄をもう一度肩に引っ掛け自分用の個室へと足を進める。
ああ、そういえば全然携帯見てねぇわ。
今の今までその存在をすっかり忘れていた携帯を鞄のポケットから取り出す。
まぁ、連絡なんてろくにないだろ。
なんて思いつつロックを解除したら目に飛び込んできたものにおもわず足を止めてしまった。
あー、マジかこれ。
どんだけあいつは暇なんだよ。
大量に送られてきたLINEの数。
古いものから順に確認して最新のものに辿り着く頃にはどっと疲れがでた。
返事代わりのスタンプすら返す気にもならず、そのままベッドに横になった。
明日の用意何もしてないな、と頭の片隅に浮かんだが身体は一切の思考を停止したように指先さえもピクリとも動かない。
そのうちどんどん重くなる目蓋。
意識がなくなる直前、脳裏に浮かんだのは何故かルームメイトの顔だった。
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