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ゲームの舞台 …3
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陽に輝く背中までの茶色の髪。
長い睫毛に縁取られた目は薄茶で、綺麗な二重はパチリとしている。
頬はうっすらピンク色。
薔薇色に色付く唇は柔らかそうに潤んでいる。
化粧気は少ないが、だからこそ素材自体が可愛いのだと感じる顔立ち。
薄いピンクのワンピースが、さらに彼女の可愛さを引き立てている。
(これが……マリ、エ)
ルシエルは不躾だと思いながらも、マリエをマジマジと観察してしまった。
マリエとアルフレッドが会う場面なんか見たくなかったが、どうしても足が動かなかった。
先程マリエは、アルフレッドの名前を呼んだ。
つまり、すでに二人は面識があるという事だ。
その事実にルシエルは背筋が冷えるような感覚になった。
「あっ。シンプソン嬢。ご機嫌よう。どうしましたか?」
ジローが作り笑いを浮かべながら最初に口を開いた。
「あ、ジローさん、こんにちは。そう言えば、園芸部の話ですが、私、やっぱり入れませんか?」
マリエが人懐こい笑顔をジローに向けた。
「あぁ、その話、ランバート先生から聞いてない?……っていうか、今、取り込み中なんだけどな」
ジローは内心怒っていた。
この国の王太子が話している最中に、会話に乗り込んで来られたからである。
誰が見ても失礼に当たる行為だ。
さらに、馴れ馴れしく名前を呼びながら近付いてくるというマナー違反付きで。
いくら同じ園芸部で仲良くしていたとしても、ジローにとってアルフレッドは別格の存在である。
同じようにルシエルも驚きと怖さと……何とも言えない色んな感情に飲まれていた。
ジローが先程言っていたマリエの評価を思い出す。
ジローが何気なくアルフレッドへと目線をやると、それにつられるようにマリエもアルフレッドを見た。
その頬が僅かに赤く染まったのを、ルシエルは見逃さなかった。
「あっ、申し訳ありません。お話中のところおじゃましてしまって……。アルフレッド様と、またお花の話がしたくて、それで……」
申し訳なさそうにしながらもアルフレッドを上目遣いで見る様は、とても可愛らしい。
(また、って。……そうか。出会いの場面はもう終わっていたんだ)
ルシエルはグラグラする頭で考えた。
(でも、やっぱり……こういう態度はゲームだから許されていた事なんだ。現実ではダメだな。……いやでも、アルが許していれば、これは、アリなんだろうけど……)
自分の考えに心が痛む。
何より、マリエが『アルフレッド様』と名前で呼んでいたことも、ルシエルにとってはショックな出来事だった。
アルフレッドは今どんな目でマリエを見ているのだろうか?
気になるが、ルシエルはどうしてもアルフレッドの方を見る事が出来なかった。
そのアルフレッドが、ゆっくりと口を開いた。
「あぁ、申し訳ないが今は取り込み中だ。……さぁ、ルシエル、私が家まで送ろう。ジロー君、ルシエルの従事に言付けを頼む」
「えっ?」
アルフレッドのマリエに対する素っ気ない態度に、ルシエルは驚いた。
「分かりました。ルシエル、お大事にね。……では」
ジローがアルフレッドに礼をし、マリエには笑顔で一瞥のみを向け、去って行った。
「えっ、あっ」
マリエが目をパチクリさせる。
その薄茶の目がルシエルを捉えようとした時、ルシエルはアルフレッドに肩を抱かれてくるりと方向転換させられた。
「さぁ、行こう。……先程より顔色が悪い」
「あ、あの、アルフレッド様?」
ルシエルは何が起こっているか分からなかった。
とりあえず、背を押されるようにして、中庭から遠ざかっている事だけは分かる。
「良いんですか?……あの、あの子……シンプソン嬢を放っておいて」
何故か機嫌の悪そうなアルフレッドに、ルシエルは恐る恐る質問した。
もちろん、アルフレッドの顔は見れないまま。
「気になるのか?」
アルフレッドにそんな風に返されて、ルシエルは言葉に詰まった。
気にならないわけがない。
もしかしたら、これから恋に落ちるかもしれない二人なのだ。
しかし、そんな事を言えるはずもない。
そんな様子のルシエルを無視するかのようにアルフレッドは無言のままルシエルを導いて、自らの馬車に押し込んだ。
「……病み上がりと聞いたが……」
馬車に乗ってから数分後、アルフレッドがポツリと呟いた。
「え?あ、はい。いつもの頭痛で……。でも、もう大丈夫です」
思わず顔を上げたルシエルは、しまったと思った。
密着するように隣に座っているアルフレッドは、声だけでなく、顔も機嫌が悪そうだ。
その理由が全く思い浮かばないルシエルは困惑する。
マリエと話したかったのに、自分の体調が悪いせいで気を遣わせたかもしれない、と心苦しくなる。
「大丈夫そうな顔色には見えないが……」
不機嫌ながらも、心配そうな目を向けてくれるアルフレッドに、ルシエルの心に少し余裕が出来た。
マリエと会ったからといって、すぐに離れて行くわけではない。
今はまだこうして側にいてくれるんだ、とルシエルは考えた。
数秒、言葉もなく見つめ合う。
アルフレッドが、ルシエルの頭を撫でるようにして後頭部に触れた。
直後、強い力で引き寄せる。
「っ!!」
二人の唇が重なった。
ルシエルは複雑な気持ちで、そのキスを受けた。
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