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旅の恥はかき捨て …2
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「ところで……例の事よろしくね?」
突然、話題を変えたミシェル。
ルシエルは何のことかと首を傾げる。
「もう!私とレオン様のことよ!」
「あ、あぁ!うん……って言うか、ミシェルって本当にレオン様のこと?」
「そうよ。……何よ?もう自由の身なんだから、良いでしょう?」
「う、ん。それは、まぁ、そうだけど。なんか、ミシェルからそう言う話を聞くのが初めてだから、戸惑って……」
そう言ったルシエルに、ミシェルはパチクリとした。
「……そう言えば、そうね。私達、そう言う恋愛の話はした事ないわね。……って言うか、仕方ないわ。私はこれが、はっ、初恋なんですものっ」
そう言って頬を染めるのを見たルシエルは、ミシェルは本当に恋をしているんだと感じた。
初めて見るミシェルの顔に、ついつい見惚れる。
この可愛らしい姉の幸せな未来を見たい。
そう願わずにはいられない。
しかし……ふと、ゲームの未来が頭を過る。
ルシエルはどうしたら良いか分からなかった。
自分が動けば、ゲームのシナリオが構築されていくのではないかという思いがどうしても拭えない。
「ところで、ルゥは?初恋はいつなのかしら?」
「えっ?はつ……いや、えーーと」
「なによ?私がこうやって腹を割って話してるのに、ルゥは教えてくれないの?……イジワル!」
ぷぅと頬を膨らませたミシェルを見て、ルシエルは少し心がほだされた。
誰にも言うつもりのない恋心。
しかし、少しくらいなら、とその口を開いた。
「……いつから、なのか、分からない、なぁ。……気付いた時には、こうなってた、ってゆーか……」
初恋なんて、きっと産まれた時からだ。
前世から恋しています、なんて言えない。
色々な事を考えながらルシエルはそう言ったのだが、そんな曖昧な答えに、ミシェルはキラキラと目を輝かやかせた。
「恋!やはり恋なのね!」
「えっ?」
「いえ!……うふふ。そう、そうなのね!ルゥは今、初恋の最中なのね!私と同じね!うふふ!」
ルシエルは気付いていなかった。
自分の初恋が進行形と取れるような返事をした事に。
「どなた?」
「へ?」
「だから、どこのどなたか聞いてるんですわ。…なぁに?これも私にだけ言わせて、自分のことは秘密にする気ですの?」
「そ、そう言う訳じゃないけど!でもっ、言えるわけないでしょ!秘密だよ!」
まさか、同じ男のアルフレッドが好きだとは言えるわけもない。
かと言って、適当に誤魔化す令嬢の名前は思い浮かばない。
何より、ミシェルに嘘を付いてもすぐにバレるだろう。
「えーー?」
「教えない!」
「ふーーーん」
不満そうにミシェルはルシエルをジトッと見た。
ルシエルは話す気がないと感じたミシェルは小さくため息を吐いた。
「分かった。……でも、ルゥが選んだ相手なら、それがどんな相手だろうと私は応援するわ」
「え?」
「いい?私はいつでもルゥの味方よ?それを忘れないでちょうだい?」
ルシエルは、ミシェルがなぜそんな事を言うのか分からなかった。
もしかして、アルフレッドへの想いを気付かれたのかと思ったが、それはないと頭を振った。
ミシェルは同性愛などの発想を持ち合わせていないと、ルシエルは思っていた為である。
「ありがとう」
兎にも角にも、自分の幸せをこうやって願ってくれる姉に、ルシエルは感謝した。
と同時に、ミシェルにこそ幸せになってもらいたいという想いが強くなる。
「あ、でも、待って」
ミシェルが真面目な顔で片手を上げた。
「レオン様だけは譲れないわ」
ミシェルのその発言に、今度はルシエルが目をパチクリさせた。
そしてすぐ、冗談なのだと解釈した。
「はははっ。それはもちろん」
それから、久しぶりに二人で心から笑い合った。
王家の別荘に着いたのは、夜遅くなってからである。
今日はもう遅いから休もうという事になり、それぞれ部屋に案内された。
夜着に着替えて、一人ベッドの上で、ルシエルは今日のミシェルとの話を思い出していた。
「いいな……」
ポツリと呟いた言葉は部屋の中に消えて行く。
好きな人の事を好きだと言えるミシェルが、ルシエルは羨ましかった。
前世で、痛い経験をしたルシエルは、自分の気持ちを誰にも打ち明けるつもりはなかった。
打ち明けて、また一人になるのは嫌だった。
天井を見上げて、それから視線を壁に移す。
隣の部屋にアルフレッドがいる。
ふと、ミシェルの真似をしてみたい衝動に駆られた。
きっと、口に出すのは気持ち良いだろう。
「僕は、アルフレッド様のことが……す……」
そう呟いて、枕に顔を埋めた。
そして、誰も聞いてない今くらい良いじゃないか、と開き直る。
「す……」
しかし、言えなかった。
一言、好き、と発することが出来ない。
誰も聞いてないと分かっていても勇気がなかった。
意識してしまった今だからこそ、口に出してしまったら、ダメになる気がした。
失恋すると分かっている恋をどうやったら忘れられるのだろうか、とルシエルは頭を抱えるのであった。
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