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はじまりの時
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「いってらっしゃいませ。」
ここは、ーーホテル マルキーズーー
誰もが認める一流ホテルだ。
ホテルとしての歴史は長いが昨年オーナーが変わり、ロビーや部屋やレストランもリニューアルしてクラシカルな雰囲気になったばかりだ。
連泊でお泊まりのお客様の外出をお見送りして、コンシェルジュのデスクに戻る。
勤めてもう三年目になる。
長谷川 隆之(はせがわ たかゆき)は新卒でホテルマンとして就職しベルボーイを経て、今年からコンシェルジュの仕事をしている。
男らしい名前に反した中性的で柔らかな雰囲気の顔と華奢な体型がコンプレックスだ。
「長谷川ちゃん、お疲れ〜。そろそろ休憩?」
近づいてくるこの男は一つ年下のドアマン、南條(なんじょう)くんだ。
「あのなぁ、お客様が近くにいなくてもロビーでその言葉遣いは止めて。それに俺、先輩だよ?!」
どこから突っ込むべきか頭を悩ませるがとりあえず落ち着けと自分を諌め、デスクの上に置いたパソコンに向き直り仕事を始めた。
「ねぇねぇ、今日早番でしょ?終わったら飲みにいかねぇ?」
苛立ちを隠しもせず彼に目を合わすこともしないで返事をする。
「行かない。酒飲まないって言ったじゃん。あとここでは私語を慎んで。じゃ、俺仕事あるから南條くんはお先に休憩にどうぞ。」
「ちぇっ。釣れないね〜。ま、そこがいいんだけど。じゃお先ー。」
はぁ‥朝から溜息なんてつきたくないのに。
ましてや職場で溜息なんてホテルマンとして失格だ。
口角を上げて、背筋を伸ばして今日も仕事に励もう。
ずっと前からホテルマン、特にコンシェルジュに憧れていた隆之はこの仕事に誇りを持っていた。
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