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No.1 剣斗と秀也 ①
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出逢い
どこからともなく聞こえるピアノの音に、俺、日野剣斗は聞き惚れていた。
桜も散りかけたこの季節。今日、はじめて部活をサボった。体を動かすことは好きだし、それだからバスケ部に在籍してる訳だし、練習だってキツいメニューは本当に嫌だって思う。でも別に嫌いじゃない。でも、たまにあるじゃん。休みたくなる時って…。
ぐるぐる頭をいろんな言葉や場面が回る。
部活に後輩が入ってきたことで少しずつかんじるプレッシャー、少しずつ考え始めなければならない進路、テストの点が上がらないこと、先々月別れた彼女のこと、あ、そういえば2週間後に遠征だ。いやだなぁ…
ゆっくり目を開くとふと音色はしずかに、優しく聞こえてきた。
その音楽はまるですべての悩みとかを忘れさせてくれるようだった。切ないようで、でも清々しくもあるような…
身体を机から起こして、教室を出てその音のする方へと歩いていく。音色はひとつ上の階、音楽室から聞こえてくるようだった。滅多に陽が入らない別校舎の冷えた階段を上る。誰もいないのか、響くのはピアノの音色と俺の階段を上る音だけ。ピアノがあるのはひとつ上の階の4階。
そっと音楽室のドアのすき間から覗くと、彼は俺に気付いて演奏をやめた。そして俺と一瞬だけ目を合わせてまた最初のメロディーを奏でる。まるでその指は鍵盤の上を滑るようにうごいて音を奏でていく。
俺に音楽、しかもクラシックの良さなんて分からない。でもこういうのを感動って言うんだろう。しばらくそうしていると、彼は気分を害したようでピアノの鍵盤のフタを丁寧に閉じて俺の横をすり抜けていく。
それが俺と水野秀也の関係の始まり。
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