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それから数日は規則正しい生活をしていた。
七海にはあれから何度か引っ張られるように呼び出されて飯を食いに行ったが、あいつは相変わらず俺にセクハラはするが、それでもどこか線引きしている事に気付いた。
おそらくアイツの言っていた真島への遠慮ってことなんだろう。
そもそも本気でその気があるなら、泊まった日にとっくに襲われてるだろう。
俺のケツが無事で心底安心したが、それより無意識とは言えヒビヤンの前だけじゃなく七海にまで涙を見られるとか、いよいよ俺は救えない。
真島からの毎日の電話は相変わらずあっという間で、その後はやっぱり切ない気持ちになったし部屋はくっそ暑かったが、それでも我慢した。
もうすぐ真島が帰ってくる。
きっとアイツは帰ってきたら、すぐ会いに来てくれる。
もしアイツに時間がなくて来れなくても、俺から少しでも会いに行こう。
そう決めて思い出したように夏休みの宿題でもやっておくことにした。
そして夏祭りのある、土曜日がやってくる。
この間までつるんでた奴らと祭りは約束していたから、予定通り待ち合わせ場所に足を向ける。
「うめのーん」
呼ばれて顔を向けると、浴衣の女子メンバーが勢揃いしていた。
幸せかよ。
「もー最近来ないからつまんないよー」
そう言われて嬉しくない男はいない。
特に今日はいつもより五割増し可愛く見える浴衣姿だ。
剥き出しのうなじが非常に色っぽい。
そしてふわりと甘ったるく鼻を擽る、女の子の香り。
メンバーが揃うと去年同様、屋台を見ながら花火までの道のりを目指そうという事になった。
食べ歩きをしながら、可愛い浴衣姿の女の子達と大人数でわいわいと騒ぐ。
俺の男友達は見ればもうデレデレで、まあそりゃそうだよなと思う。
実際去年の俺も仁美ちゃんや亜美ちゃんの浴衣姿にデレデレしてたなー、なんて懐かしい思い出が蘇る。
真島だけは安定の俺にデレデレだったが。
確か去年は真島と亜美ちゃんを二人きりにさせるため、仁美ちゃんと企てたんだったか。
あの頃はまだ真島を好きじゃなかったが、それでも今思えば少しは惹かれ始めていたように思える。
等間隔に並ぶ提灯の明かりと、神輿を担ぐ人の熱気。
お囃子の音。
女子たちのきゃいきゃいはしゃぐ声。
それなりに楽しみながら歩いていたら、神社の前を横切った。
俺はふと思いだして、口を開く。
「なあ、知ってる?」
「え?なになに」
「ここの神社にお参りすると、願いが叶うかもしれないぞ」
「――えっ!えっ、なにそれ!初めて聞いたー!」
女子が好きそうなネタだ。
あっという間に盛り上がって、参拝しようとなる。
何テキトーなこと言ってんだという男共のしれっとした視線を感じたが、残念ながら噓じゃない。
なぜなら実際にありえない願いをして、叶った奴を俺は知っている。
『た…高瀬くんは何かお願いすることあるの?』
『俺?ないよ』
『えっ、ないの』
『おー』
『お前は?』
『俺は…えっと――』
本殿の前に立ち手を合わせると、去年の思い出が蘇ってくる。
ちらちらと赤い顔で俺を見ながら、真島は言葉を詰まらせていた。
アイツが何をお願いしたかなんて、聞いちゃいないが分かってる。
そしてきっとあの時の真島の願いは、叶った。
俺としてはやっぱりこんな時ばかりの神頼みなんて、それこそ逆にバチが当たりそうだとか去年同様思ってしまう。
だが今年はそんな大それた願いはしないから、少し真島を見習ってお願いしてみようかと思う。
何も無理な願いじゃない。
叶いそうな願いでいい。
ゆっくりと目を閉じる。
俺は残りの高校生活、少しでも長く真島と一緒にいられますようにと願った。
――と、不意にスマホが音を立てる。
けたたましい音に慌てて参拝の列を離れて、スマホを取り出す。
神聖な場所だからか周りの参拝客の目が若干痛い。
なんだよと画面に表示されている名前を見れば、真島からだった。
自然と心臓が跳ね上がる。
え、なんで。
まだいつも掛かってくる時間よりも全然早い。
参拝を終えた友達が戻ってきていたが、悪いと一度謝る仕草を取ってから俺は通話ボタンを押した。
『――高瀬くん!俺今から帰るからっ!すぐ会いにいくからっ』
開口一番、もうまくし立てる勢いで真島の声がした。
あんまり元気に言うモンだから、一瞬何のことだか頭に入ってこなかった。
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