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「ただい――」
家の扉を開けたら、ダッシュで走り寄ってきた奏志が飛びついてきた。
「な、何も無くてよかった」
心底安心したという感じで俺を抱きしめる。
たかが貞男を送っていっただけなのに、どんな心配のされようだ。
ヒビヤンに茶化される前に身体を引き剥がして、リビングへ向かう。
「おかえりー」
ピコピコゲームやってるヒビヤンは、俺に視線を向けぬままテレビに熱中している。
俺もやる、と隣に座ろうとしたら、奏志に手を引っ張られた。
「ちゃんとうがいと手洗いしないと風邪引いちゃうよ」
「あー、へいへい」
めんどくせーなと思いつついつものことなので大人しく従う。
「母親かよ」
「母親よりちゃんとしてるな」
ヒビヤンの冷静なツッコミに冷静に返してから、晩メシまで一緒にゲームをやる。
晩メシを食って風呂も入って、奏志の淹れてくれたココアを飲みながら雑談をする。
積もる話もあったが、時間も遅いのでさっさと寝ることにした。
「奏志ベッド使えよ。俺ヒビヤンと下で寝るから」
布団一組とベッドしかないわけだが、高身長組がベッドで二人はさすがにきつい。
気を使って言った言葉だったが、目をまん丸にされた。
「――ちょっとまって。ありえないよ。梅乃くんがベッド使ってね。絶対そこから降りてこないでね」
珍しくハッキリとした口調だった。
というか絶対降りてこないでとかどういう意味だ。
いまだかつて無いほど俺の前で神経を研ぎ澄ませたようにキリッとイケメンぶりを発揮している奏志に、絶対にベッドを使えと命令させられる。
気圧されるまま頷くが、さすがに180センチ辺りの男二人が一つの布団で寝るのは狭すぎる。
「ああ、いいよ。俺リビングのソファで。どこでもいいし」
「は?せっかくこっち来てんのにソファとか寝づらいだろ」
そう言ったら、ニヤリとした視線を寄越される。
「気にすんな。ただし変な声聞かせてくるんじゃねーぞ」
「変な声って――」
言われた言葉の意味に遅れて気付いて、ドカッと顔が熱くなる。
奏志と二人自室で寝るから、ってことかよ。
「あ、ありえねーんだよっ」
慌ててそう言ったがククと喉元で笑われて、ヒビヤンはさくっとリビングへ足を向けた。
いつもだったら奏志と同じベッドで寝るが、今日はヒビヤンもいるということで別の布団で寝る。
どこか淋しげな顔を向けられたが、さすがに今は構ってやれない。
「…あの、少しだけ手を繋いだらだめかな」
電気を消そうとしたら奏志にこっそりと言われた。
どうやら今日は全然俺に触れていないから物足りないらしい。
コクリと頷いて、ベッドの端から手を落とす。
おずおずと言った感じで触れる指先が暖かくて、俺は安心したようにすぐ眠りに落ちてしまった。
朝の日差しを感じたが、まだ眠くて布団にくるまる。
――と、ベッドが沈み込んだ。
同じ部屋で寝てたし奏志だろうが、ヒビヤンがリビングにいる。
さすがに相手出来ないので、寝返りをうって背を向けた。
それでも伸びてきた手が俺を後ろから抱き込んで、ゆるりと頬を撫でる。
暖かい手のひらにじわりと心が緩んで、自然と頬を寄せてしまう。
甘えたら甘えた分だけ優しく抱き込まれて、ふと違和感を覚えた。
どう考えてもアイツがこんなに余裕たっぷりなはずがない。
「…ヒビヤンだろ」
「あ、バレた?」
そのままヒビヤンが布団の中へ潜り込んでくる。
やっぱりなと身体を反転させると、向かい合わせになったヒビヤンがニシシと笑った。
「朝飯出来そうだったから、高瀬起こしにきた」
「…やだ。まだ寝たい」
「時間は有限なんだよ。寝かせねえ」
そう言って身体をくすぐられる。
眠いし起きたばっかりだし、鈍く動く身体がその手を止められない。
脇腹をくすぐられて堪らず俺は笑ってしまった。
「…っくく、やめろって」
「目え覚めた?今日アレやろうぜ。俺実家で特訓してきたし」
「お、マジかよ。絶対負けねえ」
「ほー?」
布団の中で挑戦的な瞳と視線があって、余計に身体をくすぐられたのでくすぐり返す。
二人で笑い合いながら攻防してたら、突然壊れるんじゃないかという勢いで扉がバンッと勢いよく開いた。
「――何やってるの。二人共」
どうやら朝からプリンスはご機嫌斜めらしい。
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