アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Story2~黒木side~
-
味は予想を裏切らなかった。だけどここで吐きだしてしまうのは流石にあれだろう。
「どう?う、上手くできてるかな?」
「...普通」
「ふ、普通?そっかー」
美穂さんは「んー」と唸りながら何か思考を巡らせているようでその姿さえも美しく見えるのはきっと元から美人だからだろう。
「よし!次はもっと上手くなるようにしてくるから楽しみにしててね」
「ん」
「次はアイシングクッキーでもしてみようかなぁ」
本当に楽しそうに笑っているが俺といてそんなに楽しいだろうか?むしろ嫌ではないのだろうか?いつからかそんな風に思うようになった。
だって俺は気持ちを表現しない。だから美穂さんはいつも赤ん坊に喋りかける母親のようだし...。
やはり喋りかけて反応が薄い相手と居ても到底楽しいとは思えない。
なのに今日も彼女は楽しそうに笑うのだ。
「あ、渚くんおはよ!今日も来たよ」
「ん」
「今日は顔色いいね。良かった」
ある日。いつもどうり美穂さんは孤児院に顔を出した。
そこで気づいてしまった。美穂さんのかがんで見えた鎖骨にあざがあることに。
「...それ」
「ん?あ!これは!ちょっとぶつけただけだよ」
「ふーん」
そう言いながら美穂さんは黒くて艶やかな長い髪を耳にかける。
俺は知っているのだ、これは美穂さんが何かを誤魔化す時にする癖。
美穂さんは何かを誤魔化している。
その時既にそう分かっていたのに...俺はあの最悪の事態を阻止できなかった。
_________
それは雨が降っていた日だった。
孤児院内は急な天気雨にバタバタと対処をしていて、子供達はそれぞれの時間を過ごす。
そこにかかってきたひとつの電話。
「はい。あ、近藤さんこんにちは。えぇ確かにまだ美穂は来ていませんが」
そう言われて気づく、確か今日は水曜日。週4でくる美穂さんが来てくれる日だ。
いつもだったらもう来ている時間なのに。
「え...?み、美穂が!?」
電話をしていた職員は途端に顔を青ざめると、急いで電話を切りバタバタと出かける準備をしだした。
美穂さんに何かあったのだろうか?
そう思うも俺の立場では大人に話しかけられない。
そんな風に思っていたら電話をとった職員が俺の元に歩いてきたのだ。
「...黒木渚。あなた美穂と仲良かったわね?」
「.........」
「はあ。だんまりなのね。ほんと気味が悪い。いい?今から言うことを1回で頭に入れなさい」
何ヶ月ぶりに美穂さん以外の人に話しかけられたと思ったら急にこれだ。
一体なんだと言うのだ。俺が美穂さんと仲がいいかなんて、そんなの答えられるはずないだろう。
だって美穂さんは俺とは釣り合わない。
もっと評価され、上にいるべき人間だ。
だが次の瞬間、職員の一言でそんな考えはどうでも良くなってしまった。
____美穂が死んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 53