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story24
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月日が経つのは早いもので、気づけば黒木との約束の日となっていた。
駅前で待っているのだが夏休みということもあり凄く人が多い。
確か今日は最高気温35度だったような?
思い出したくない事を思い出したと思い、水族館の中が涼しいことを祈る事にした。
しばらく経ってそろそろ限界だと思った時、黒木が遠くから歩いてくるのが見えた。
服装は七分丈程の白を基調とした緩いシャツとデニム生地のジーパン。黒のスニーカー。首元には黒のシンプルなネックレスが付けられていて、カバンは持っていない。
多分財布と携帯ほどしか持っていないのだろう。
「おまたせ珂神」
俺を見つけたと同時に微笑みながらそう言うこいつを見て、イケメンはシンプルな服装もオシャレに着こなせるのだと実感した。
『遅せぇよ。もう約束時間から30分経ってんだけど』
「ごめん。道に迷って」
この辺は案外学校から遠くない場所なのだが、どうして迷うのだろうか。
意外にも方向音痴だったりして?
「それじゃ行こっか。混んでるよなぁ」
『そりゃな。家族連ればっかだろ』
「人混みはあんまり得意じゃないんだけどね、珂神は?」
『得意ではない』
とゆうか人混みが苦手なら水族館なんて何故誘ったのだろうか。
遊ぶにしても普通にうちに来ればよかったのに。
ああそうか。もしかしたら素のままで俺といたかったのかもしれない。なんて。
少し歩くと先程の倍人が多くなってきた。
少し、いや、かなり帰りたくなったが折角チケットを取ってくれたのに帰るのは悪い気がする。
家族が多い事から察するに多分水族館目当ての人達だろう。
「あ、こっち。入れるって」
『ああ』
「珂神、そこ段差あるから気を付けて」
『ああ』
「チケットかして、まとめて出すから」
『.........』
なんか、なんか...。
「やっと入れたね。涼しくてよかった...珂神?」
『え?』
「なんか上の空だったけど」
『あ、なんか。黒木ってそんな感じだったか?』
「そんな?」
なんというかもう少し...違う雰囲気だったような?
喋り方も微妙に違う気がするし。
『喋り方とか...雰囲気とか前と違う』
「あー。もしかしたらそうかも」
『何で?』
「先生っぽく喋るのが新人教師の時から癖でね。大人っぽくしてたかったのかも。けど本当はこっちが素なのかな」
『へぇ。なんかこっちの方が優しい雰囲気ある』
「はは。そうかな」
なんだか別の人と話してるようで落ち着かないがこっちの顔が黒木の素なわけか。
本当は...こんな風に笑うんだ。
水族館に入ってから、経路に沿って一つずつ水槽を見て行った。
黒木は魚に詳しく、俺が「あれは何か」と聞くとほぼの魚については詳しく説明してくれた。
水族館が好きだと言っていたが何故好きなのだろうか。
知りたいこと、聞きたいことがたくさん増えてきて改めて黒木に対しての姿勢が前とは違っているのに自分で気づく。
前だったら「黒木渚」を知りたいなんて死んでも思わなかっただろう。
「もうすぐお昼だね。予約入れてた所は3階だって」
『あ、ああ。分かったから...なんで手繋ぐんだよ』
「え?ダメだった?」
『ダメってゆーか...』
普通は男同士で水族館に来て手なんて繋がないと思う。
黒木があまりになんで?という顔をしているので自分が違うのかと思ったが。そんな訳ない。
黒木は「あー普通そっか」と俺の心の内を察したように手を離して再び前を歩き出した。
しかしきちんと俺の歩幅に合わせている。
なんか調子が狂う。そういえば...
___俺のために止めたと言っていたタバコの匂いはもう黒木からはしなかった。
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