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休日 5
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「こんにちは。」
挨拶は基本。
僕を見た彼女達はキャーと何やら騒いでいたけど『さつきさん』が気になっていた僕は曖昧に笑うしか出来なかった。
彼女達と別れて、昼食にパスタとピザを食べて、その後も少しだけ店を見て回ったけど、『さつきさん』と律兄ちゃんが、どんな関係なのか気になって僕は上の空だった。
「雫、大丈夫か?」
心配した律兄ちゃんに声をかけられ「ちょっと疲れたのかな。」と誤魔化した。
怪我をして夏休みに入ってからは、あまり出歩く事もなかったから律兄ちゃんも「久しぶりに出歩いたからな。」と、早々に帰る事になった。
律兄ちゃんの運転する車の助手席で、流れる景色を見ながら朝は1人デートみたいだと浮かれていたのに、帰りにはそんな気分も何処かにいってしまって。
かってに、喜んだり沈んだりしている自分が滑稽に思えた。
『さつきさん』は律兄ちゃんの彼女なんだと思う。
僕がマンションに世話になってからは1度も家に来た事も会った事もないけど、女性の物らしい物は見当たらないけど1人暮らしにしては少し大きな部屋に大きなベッド、それだけで彼女がこの部屋に来ていたんだろ事が想像出来て、余計に落ち込んでしまった。
怪我が治ったら出て行かないと。
ただ、正兄ちゃんと愛美さんの事もあって。昨日、愛美さんは正兄ちゃんと別れると言っていたが、僕が居なければ、あの2人は上手くいくんじゃないかと考えて、自分の居場所が無くなる事にまた不安を感じてしまった。
帰ってからも、理由の分からない不安と、これから自分がどうすればいいのか考えて、何をするのも手がつかず、いつも緊張し過ぎるお風呂でも律兄ちゃんに大人しく全身を洗われてしまった。
「雫、どうしたんだ?」
ベッドで2人並んで横になる。
律兄ちゃんが心配気な声で僕の頭を優しく撫でる。
「大丈夫、疲れただけだから。」
本当の事なんて言えるわけがない。
どんなに僕が兄ちゃん達を好きでも、僕と兄ちゃん達は兄弟で同性で、ましてや正兄ちゃんには奥さんが、律兄ちゃんには彼女がいる。
こうやって、兄ちゃん達が僕に優しくて甘やかしてくれるのは僕が弟で両親がなくなった、あの日の事があるからだ。
それを僕も分かってるから、そんな2人の優しさに漬け込んで甘えている。
僕は卑怯で醜く穢らわしいんだ。
僕の頭を撫でてくれる律兄ちゃんの優しさに涙がこぼれた。
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