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帰宅したい 陸
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「あ、あのさぁ、坂口」
動き出した車は、無人のシャッター商店街を通りすぎると、大通りへと向かって行った。
比較的に車が随分と多くなったため、周りがネオンライトでカラフルに染色され、夜中の街をうろつく男女などもみられるようになった。
そこら辺を歩く酔っ払いがギャーギャー騒いだりして、それの周りに野次馬が集まって警察もよって__どんどん周囲は騒がしくなっていく。
人工的な街の光が、夜空の明るさを超えて、星なんてほとんど見えなくなっていた。
だが、奏は夜空を見上げていた。
唯一取り残された一人ぼっちの満月が、寂しそうにそこにいた。
__お前もいつか、ここの周りの星みたいに、夜を照らせなくなって死んでしまうんだろうなぁ。
そんななか気づいたのだ。
ここはどこだ、と。
少し慌て気味なのに気づいていないのか、それともわざと気づいていないふりをしているのか、そこまで良くはわからないが、とにかく何処かわからないのは確かだった。
「んー?」
坂口は片手運転をしながらガムを食べていた。
一体何処から取り出したのだか、微かなミントの香りがしたため、坂口が良く食べているミントの辛いガムらしい。
「奏も食べたいー?
ここに置いてあるから、勝手に取って食べちゃっていーよ」
「あ、うん」
__あ、流された。
だが、実際食べなきゃ損な気がしてきたので、小さな箱の中から一粒だけガムをとり、色も気にせず口に放り込んだ。
一瞬辛みに驚いたものの、意外と美味しく、ミントの香りが口の中から立ち込めていく。
そして、なにかフルーティーな感じがした。
「なんかこれ、フルーツ入ってんの?」
「え゛っ!!」
坂口はちょっとショックそうな声を上げて、「それ超当たりなんだけど!」といってきた。
道理で美味しい訳だ、と奏は思った。
「じゃなかった!!」
そういえば目的をすっかり忘れていた。
思い出して大声を上げると、椅子の上で坂口がぴょんとはねた。
「坂口、ここ何処!!」
「え、それは__」
坂口は少し返答につまった。
__もしかして、道に迷ったのか!?
「ちょっと寄り道だから、奏は気にしないでいいよ!」
「どーこーなーんーだー!!!!」
奏は車内に響き渡って窓がビリビリいうくらい大声で叫ぶが、坂口は笑ったままだった。
__俺、何処つれてかれんのー!?
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