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御影が啼く 伍
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にゃあ__。
平穏__否、それとは程遠いのかもしれないが、微かな安堵__を切ったのは、一定な御影の鳴き声だった。
にゃあ、それしか鳴かない。
まるでプログラミングされたロボットのように、トーンもスピードも、そしてあの目も__ずっと同じだった。
奏と坂口から、一瞬にして表情が消え、そのまま硬直する。
近藤は先ほどの笑顔のままで、その間の2mには、とてつもない温度差という名の壁が立ちはだかっているようなものだった。
__まてよ、こいつ、頭は__。
鳴いているときに、頭の落ちた音はしなかった。
口を開けると必ず落ちるそれを、もうすでに落としているようだった。
「御影、お父さんはどこにやったの?」
__嘘だろ!?
もし自分の近くにそれがあったら。
失神して倒れそうだった。
近藤は話の通じないおかしな人間だった。
もっと早く気づいていればよかったのに、なんでこうなってしまったんだ。
奏は自問自答を繰り返すものの、答えは一向に出ない。
当たり前だ、奏自ら来ようと思ったわけではない。
ただ、坂口が寄り道と話していたからこうしてここにいるのだ。
一方その坂口も、硬直したままということはこんな人間だとは思ってもみなかったらしい。
ヤクザでも__彼の父でもやらないようなことをする人間だなんて。
そう思っているに違いない。
「あら、奏さん、それ、御影のお父さんなんですよ」
__ああ、知ってるよ、俺が探したんだから。
まるで記憶喪失者との会話だった。
全く成り立たない、形だけの会話。
中身は何もなくて、風船のようだった。
にゃあ。
無機質な猫の声に、奏の顔はみるみる青くなっていく。
その隣で坂口も同じような反応を示していた。
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