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後悔は殻の中 壱
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__やった、のか…?
奏は自分のとった行動に悪意を感じていないように、声を抑えた笑いをしながら、手をはたいた。
パンパン、パン__乾いた音が静かな夜空に響く。
坂口はそれを見つめて絶句していた。
まるで見たことのない生物を見るような、そんな目を向けて、表情を曇らせていた。
「やめろよ__、奏__」
坂口はぼそりといったが、奏には何一つ聞こえていなかった。
奏は、自分は殻を破ったんだと思っていた。
しかし、奏は気づいていなかったのだ、自分が行った事実のすべてに。
奏は、確かに殻を破った。
だが、それは自分を守るための殻__理性、だった。
本性をむき出しにした奏を、坂口は止めようとはしないし、奏自身、自分が何をしているのかよくわかっていない。
分かることは、興奮、喜び、感動__。
それさえあれば、幸せだというように、奏は大声で笑いだす。
「あはは、あははははははははははははははっ」
壊れたロボットのようだった。
それこそ、御影を壊したことで自分をも壊したように、ただただ笑う。
それが、いまの奏には楽しかったのだ、本性をさらけ出せた喜びが、奏を支配して。
しかし__それは長く続かない。
理性はなにか外から指令を受ければ、また働くのだから。
完全に外と仲の世界を孤立させた奏に、届く言葉なんてわからない。
坂口は切羽詰まった表情で打開策を練るものの、答えが出るわけもない。
__どうすれば__。
坂口はそれでも考えることに専念した。
__奏を護れるんだろうか__?
坂口は、それしかないのだ。
彼の中心は10歳のころに、奏という親友に移った。
そこから築き上げた彼の世界は、すべてが『奏が自分を愛してくれること』につながっていた。
__だから、だから護りたいんだ。
自分を今まで好いていてくれた奏、ほかの誰にも汚されたくない、大事な存在__。
それを変えてしまった輩が、許せなくて。
__奏、奏。
「今、助けるから」
坂口の声は届かない。
奏がまだまだ笑い続ける。
永遠に笑っていそうな気がしてしまうくらい、息つぐ暇もなく、ただただ、ずっと。
「だから__俺に護らせてよ」
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