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起きた黒川 壱
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「はぁ、それにしても空気が悪い。
随分と長い間寝ていたのでしょうか、というか、せめて締め切らないで半分くらいドアを開けていてくれればいいものを。
まぁ、そういう人ですから、仕方ありませんね。
天然、なところもいいですよ、__坂口さんは」
__なんででしょう、段々思考が変わってきてしまったのかもしれませんね、それと志向も。
何故か、奏のことを言おうとしてしまい、そのたびに口をふさぐため、無駄に読点の多い独り言とってしまった。
なぜ、そんなにも言いたいのかはわからない。
今更、『死にかけた時に助けた救世主です言った』だなんて言ったって、信じてくれるわけがないし、たとえそれで信じてもらえたとしても、何か恩を返してほしいという風に思ってもいない。
ただ、奏という言葉が、単語が、名詞が__脳内にふと浮かんでくるだけだ。
それ以外には何もないし、なんの支障もない。
しかし、その言葉を口に出さない度に、どんどん自分の心の中に、悲しいという感情が募っていく感覚があった。
だからといって、別に、支障だなんてない。
自分が寝せられていたソファーから立ち上がると、コキリという関節の鳴る音が聞こえた。
さほど動かすようなほうでもなかったが、毎日こうも音が鳴るような関節も持ち合わせてはいなかった。
やはり、長く寝せられていたのかもしれない。
「今は__、本当に何日の何時でしょうか__。
嗚呼、おなかも減っていますし、できれば早めに確認して、この部屋を出ていきたいですね」
丁度ドアの横の、自分の寝ていたソファーの真正面に、壁に備え付けられていたアナログ時計があったはずだ。
確か、前回この部屋に入ったときに見かけたので、さほど期間もたってはいなかったからまだ置いてあるだろう。
しかし、問題は電池が残っているかだ。
あまり部屋を使ってはいなかったので、もしかしたら動いていない可能性もある。
それが目に入ったため、ひとまず有ることに安堵する。
カチッカチッと音がしているので、きちんと秒針も動いているようだ。
そこには、10:30とだけあった。
「そうですか、十時半ですか__。
午前か午後かわからないのが、アナログ時計の悪いところですよね。
身体時計も時間が完全にずれているのでまったくあてになりませんし__。
まぁ、それでも無いよりはましでしょうけれどね」
すぐそばにドアがあったので、無意識にドアノブを回す。
が、開かない。
「へ__?」
思わず変な声を出してしまった。
そんなことを後悔しながら、黒川は再度ドアノブを回してみる。
やはり、開かなかった。
「なぜ、開かないのです?」
不思議でならなかった。
なぜ中に病人がいる__まぁ、気絶していた人なのだが__のに、閉めてしまうのか。
__まぁ、そこが可愛いところなんですけどね。
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