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崩れ落ちた日常2
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俺はその後、必死に働いた
それはもう寝る間を惜しんで必死こいて働いた
だが結局大きな取り引きで失敗をしてしまった
俺は何度も確認した記憶があるのに数値が変わっていて取り返しのつかないミスだった
お偉いさんから呼ばれて退職を勧められたくらいに
貯金を使い潰してしまったことを妻には相談出来ずにいたが仕事を退職することになり正直に話したところ生活が出来ないのは困るということで別れることとなった
もともと親同士が決めた許嫁だったが、お互いに同性が好きだということをお互いだけが知っていた
良家の娘息子が同性愛など理解されるものではないため、互いにそれをひた隠しにし身を固める結婚をしただけで友情はあれど恋愛感情はない
実家からの干渉から離れるための一時的な結婚という認識でいつかは離婚はすることになっていたためすんなりと離婚が決まった
妻は昨夜離婚届にサインをして最後の挨拶をし荷物と共に家を出ていった
朝目が覚めると昨日は気づかなかった手紙が寝室の机の上に置いてあった
手紙を開くと謝罪と共に半分以上はあなたが使ったのですから財産分与として残りの貯金は持っていきますという旨が書いてあった
自分がやらかしたことだからむしろそうしてくれて良かったし、高校生の頃から好きだという女の子のもとへ行って仲良く暮らしていて欲しいと願った
癖でいつも通り仕事に行くふりをしスーツを着て市役所に訪れ離婚届を提出し、気がつくとタクシーに乗って「海に行きたい」と言っていた
辿り着いた海はとても綺麗だった
息を吸い込むと海の匂いが胸に広がる
非日常なその綺麗な景色にこれまでの不安が押し寄せ涙が目に溜まっていく
これまでのことを全て忘れるかのように、流すかのように、浜辺の岩に腰かけて気が済むまで泣いた
周りに人が居なくて本当に良かった
かなりの時間を掛けて落ち着きを取り戻したが
行きのタクシー代は払えても帰りには到底金が足りない
妻だった人が持って行った通帳と一緒にクレジットカードの類も抜かれており途方に暮れた
家に帰っても金なんてない
時間ならたくさんあるからとどうにか歩いて帰ろうとしてスマホのマップを使いながら道を辿ったが足が感覚を失っても一向に知っている景色が見える様子はない
充電がなくなりかけたところで公園と歩道の間にある薄汚れたベンチに気が付き、座ってから2時間ほどはぼーっとしていたのだろうか
向かい側の煙突から出る白い煙がオレンジ色に光るのを眺めて夢のようだと思っていた現実に引き戻された
「何を間違えたんだろうな…」
何度となく頭の中で繰り返した言葉を呟いてみる
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