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俺と風紀副委員長-2
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大自然の緑豊かな学園からバスで45分のところに少し開けた街があり、ここの生徒達は外出届けを出しては繰り出しているようだ。
自慢じゃないが俺は伯父夫婦の家に帰省する以外は1度も外出した事が無い。
学園の敷地内にはコンビニ、本屋兼文房具屋、美容室などが揃っており全く不自由しないのだ。欲しいものはネットでも手に入るしな。
しかも理事長の親戚が経営する藤沢総合病院が隣接しており、学園の敷地内から学生証を提示すれば直通出来るシステムだ。
だからほぼ学園内で全ての生活が賄うので便利さではなく、解放的なものを求めて出かける生徒が多い。
良いとこの坊ちゃんが多く、しかもイケメンだらけとなれば、それを面白く思わない他校の生徒に目をつけられるのも仕方が無いことだろう。
そして、絡まれている生徒を見つけた風紀副委員長こと百瀬夏彦が、穏便に済ませようとした結果、大人数で攻撃されたものを全て返り討ちにした話は有名だ。
それ以来他校の不良からも懐かれて交流があるらしく、我が学園の生徒も安心して外出出来るようになった。
ーーそりゃあ、ヒーローにもなるわな。
そんなやつが何故「副」なのかと言えば、単純に委員長になりたい生徒がいて、どうぞどうぞと譲ったらしい。地位や名誉にこだわらないとかで更に人気はアップしているが、世の中そんなに甘くはないし、譲ってばかりが美談では無いだろうとひねくれた俺はそう思っている。
その風紀副委員長、百瀬が目を光らせている学園内では滅多に問題が起こるはずもなく、なかなか平和な日々を過ごせているわけだが、平和になると異質なものに目がいくのだろう。最近やたらと俺に話しかけてくる。
「佐藤隼人!君はまた不健康そうな顔をして……ちゃんと栄養をとっているのか?」
育ちの良いイケメンが多いこの学園で、見るからに魂をどこかに置いてきてしまったかのような貧相な俺に興味を持ったのか、やたらと心配をしてくるのだ。
だからといって相手にするのも面倒臭い俺は瞳孔の開いた危ない(と言われている)目で百瀬の顔を一瞥するだけで、そのまま進行方向に行くだけだ。
「ちょっ、佐藤!また無視するのかよ。少しくらい会話してもいいだろう!」
慌てて追ってくるのがだるくて仕方がない。イケメンしつこい。
いつもは完全無視を決め込むのだが、たまには少しぐらい相手をしても良いかと思い、お望み通り簡潔に会話をしてやった。
「栄養は必要な分だけ取っているし、お前に心配される覚えはない。以上だ」
俺が全力でキッと睨み付けると、ううっ、と呻いたあと目を大きく見開いて口をパクパクさせている。
ーーふん。普段皆から慕われているから睨まれたこともほとんど無いんだろうな。俺に敵意を向けられたくらいで驚いてんじゃねえよ。
呆れながら立ち去ろうとした俺の後頭部に向かってやつは小さく呟いた。
「嘘だろ……佐藤が話してくれた」
ーーへっ?
耳を疑った俺が思わず振り向くと、百瀬が何やらもじもじしている。キモい。
きっと生徒全員と仲良しこよしがしたいのだろう。めでたい奴だな。
ひねくれているのは分かっているが、何の悩みも無いようなやつを見ると劣等感に押しつぶされそうになり、息苦しくて仕方が無い。俺は無言で足早に走り去った。
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