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俺の打ち明け話-2
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「分かった。まず佐藤が引き取られなければ良かったと思うのは間違いだ。佐藤が来なければ、お兄さんの無理が続いてたわけで、もっと取り返しがつかないくらいに壊れてたかも知れないからな」
そう言えば、兄も俺が来る前に既に限界が来ていたと言っていた気がする。俺が少なからず癒しになっていた事は兄の話からも分かるので、あの家族にとって俺はいらない子ではなかったと思っても良いのだろう。
「お兄さんとの身体の関係だって、頼りにされてる相手から言い寄られて悪い気はしないものだし、快楽に勝てる男なんてなかなかいないものさ」
快楽に勝つどころか溺れまくっていたけどな。しかしいくら快楽に弱い俺でもあの時好きなやつでも居れば断っていたはずだ。
何はともあれ兄弟の身体の関係について、百瀬に嫌悪感が湧かなかったことがありがたいと思う。
「海外で人生の軌道修正が出来たんだから、結果的に良い事ばかりだろ。ご両親とお兄さんの話は本人達が決める事だ。佐藤が間でゴチャゴチャしたって始まらないだろ?」
なるほど。兄は自分に先入観を持たれる事なく、新たな地でのびのびと暮らせていることを喜んでいた。
今まで気が付かなかったが、伯父夫婦とは連絡も取って居る様だし、俺が口を挟む問題では無いだろう。
これからの事は兄と伯父夫婦が決める事だから任せれば良いのだな。
「俺が会って感じた事だけど、確かに佐藤の親はお前に遠慮してるようだったな。それもきっとお兄さんに期待して、厳しくしすぎたと反省しているからだと考えられるぞ」
そういえば春休みに帰省をした時、百瀬は伯父夫婦と会ったんだ。あの僅かな時間で色々見抜いていたのか。
「それとは別に佐藤を可愛がりたくて仕方が無い様子だったし、決して親子ごっこなんかじゃないと思うんだ」
ひねくれた俺が、伯父夫婦の優しさや愛情を全て拒絶していたから、不自然な気がしていただけなのだろうか。本当に心から可愛がってくれていたのなら、俺の態度はかなり酷いものだった。
「だからさ、伯父さんではなく……お父さんって呼んでみたら?伯母さんもお母さんて呼ばれる日を待ってると思うぜ」
「!!!!!」
俺はドキッとして固まってしまった。今まで気が付かなかった自分にも驚きだが、確かに俺は二人のことを未だに伯父さん、伯母さんと呼んでいる。
いつまでも他人行儀な俺を見て、どんな気持ちで過ごしていたのだろうか……只々申し訳ない。
百瀬に話して良かったと思う。今日だけで多くの悩み事が解決された上に、色々な事に気付くことが出来たのだ。
俺が重く受け止めていた事を百瀬はなんてことは無いように身軽にしてくれる。
「なんかお前って物事を重く受け止めないっつうか、ポジティブっていうか……俺が約二年もの間悩み続けてた事なのに、あっさり解決してくれて、凄いよな」
百瀬はヘラりと笑うと「軽々しく考えてないし、これでもかなり真剣だぜっ」と言いながら、知らず知らず力が入っていた俺の拳を撫でさすってくれた。
もしかするとこれから思い返した時に、納得がいかない事が出てくるかも知れないが、百瀬に話せばあっさり解決してくれそうで気が楽になり、肩の力も抜けていった。
「俺にとって最も肝心な確認がまだ残ってる。佐藤、正直に答えてくれ」
急に表情を引き締めた百瀬の瞳がキラリと光った気がした。真面目腐った態度に一気に緊張が走った俺は、喉が音を立てるのを聞きながら話の続きを待った。
「佐藤は……その、お兄さんの事をす、好きなのか?」
「……はあっ!?」
何を今更な事を聞いてくるのだろうか。あれほどバッサリ俺の悩みを切って捌いてくれた同一人物とは思えない。
まあ俺もつい先程兄と話したことで、自分の気持ちの答えを知ったわけだから、この際ちゃんと伝えておくべきだよな。
「あの頃の兄に対しての気持ちは同情だったんだ。今は兄として大切な家族だと思っているが、そこにお前が気にするような恋情はないよ」
例えこの先兄と二人っきりになったとしても、過去のような関係にはならない。兄もそのことは充分わかっているから海外へ行ったのだし、新たな恋へと進んでいる。
ーー俺もここら辺で素直になってみようか。
「俺は百瀬が……変態の百瀬が好きだ。ちゃんと好きだ」
お前が何者でもいい。変人と呼ばれる俺がここまで誰かに愛されるだなんて思ってもみなかったんだ。
百瀬は置物のように固まってしまったが、気にせず問いかけてみた。
「なあ百瀬。俺は……俺は幸せになってもいいんだよな?」
最後の方は涙声で震えてしまった。俺ってば恥ずかしいやつ。
百瀬は目をぱちくりしながらも秀麗な美貌を崩さず、優しく笑ったかと思うと瞳を潤ませ、声を張りながら宣言して来た。
「当たり前だ佐藤!幸せになろう。改めて言う。俺と付き合ってくれ。必ず……必ず俺が、幸せになる!」
「なんだって!?お前が幸せになるのかよ!」
一瞬呆れたが、そこは俺が幸せにしてやる、と言わないところが百瀬らしくて笑ってしまった。
最後の最後でカッコつかない残念な男を、たまらなく愛しいと感じてしまう。百瀬が自信を持って幸せになるって言うんだから、俺だって絶対幸せになってやるさ。
強烈な呪縛から解き放たれた俺は、まるで沼から引き上げられたように安堵している。これまでと同様、二人の関係は明かさないと約束をし、今日から付き合うことにした。
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