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通り魔
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男は白い髪の少年の絵を見せて、金を強請った。
断ったが、しつこかった。
何度も同じやり取りを繰り返し、その場から立ち去ろうとして縋りつかれる。そんな時ふと魔が差した。
『殺してしまおう』
そんなに、本気じゃなかったとは思う。元々の目的は家族の殺害だったわけで...。
けど、買ったばかりの包丁で刺したら、男は簡単にその場に崩れた。
「・・・・」
そして気が付くと俺は、男を刺した高揚感に駆られていた。
数年ぶりに、気分がよかった。
男の刺し口をこじ開けて、身体の中に手を突っ込むと、生きていた体温が手を覆った。
知らない男の死体ではあったが、誰にも取られたくないと思った俺は、男の死体を一度廃工場の隅に隠し、剥製にした。その後、一人二人と殺したが、最初の男以外は剥製にする気も起きなかった。
重に会ったのは4~5人目を殺して世間に通り魔扱いされ出した頃だ。最初は殺そうと思ったけど、簡単に地面にぶっ飛ばされて渋々雇われることにした。
高校に上がってからは、一人暮らしになって重からの仕事の頻度も増えた。楽を拾ったのはその仕事の帰りだった。
今考えれば、変な縁だ。
あの時男が、いや楽の父親が売りつけようとしていたのは・・・楽の絵だったかもしれない。
「・・・買ってただ帰ってれば、こうはならなかったのかな」
金なら腐るほどあった。無理やり買わされるにしろ十分惹きつけられる絵だった。本当はわざと断って・・・殺す理由を作ってただけじゃないのか。
「.......いや、考えても無駄だな」
今頃どう後悔したって、過去は変えられない。
そもそも俺は後悔なんて感情、持ち合わせているんだろうか。
俺は考えるのをやめて、家の玄関の扉に手をかけた。
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