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わからない
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なんとなく、今は聞かない方がいい気がする。
「そういえば、通り魔ってどうなったんだろうねぇ?近頃ニュースでも見なくなったけど」
俺は他に気になったことに話題をうつす。
「確かに・・・死んだんじゃないか?被害者に刺されたとかだと笑えるな」
尼野くんは相変わらずの無表情で言う。
「なるほどねぇ、俺、ちょっと期待してたんだけどなぁ」
「期待?」
尼野くんは心底不思議そうに尋ねる。
俺はにっこりと笑って言った。
「うん、期待。俺ね、通り魔に父親殺されてるんだ」
普段人に話すことはない・・・けど、何故か、ぽろっと口に出してしまった。
尼野くんになら、いいんじゃないか、なんとなくそう思った。
「父親を殺した人がどんな人なのか見たくてさ・・・どうしたいのかは正直わからない、けど一度会ってみたかったんだ・・・変だよね」
俺は苦笑して、そう続ける。
憎んでる・・・は多分違う。彼は俺にとっての救いだったから。
会って感謝したいのか、傍にいたいのか、殺してほしいのか・・・会わないことには、わからない。
「ただ、死ぬ前には会いたいんだ」
俺はそう言って、尼野くんの表情を確認する。
話が、重すぎただろうか。
軽い調子で話したつもりではあるけど、重い話には変わりない。
尼野くんはしばらくの間、無言になり、そして一言。
「・・・・別に、変じゃないだろ」
そう言った。
「そっか、ありがとう」
否定されなかったのがなんとなく嬉しくて、俺はお礼を言った。
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