アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
夢の世界
-
「…先生ー、キリちゃんが大変だ」
ある友達が俺の名前が桐谷なのをいいことにキリちゃんと呼びつつも、人の絵を罵倒する。
美術の時間。その日は水彩画で、
お題は『夢の世界』。
なのに。
「ありゃ、キリちゃんどうしたの。というか水彩画のくせに色濃いな、ほとんど黒と赤で水彩画っぽくない。キリちゃん閻魔様なの?」
と言われるくらい。
先生は30歳に見えないくらい童顔の男の先生で、生徒の反応に悪ノリしかしない。
いつもは俺のことは桐谷って呼び捨てなのに。
俺の心は地獄をさまよっているんです…。
米崎さんに謝らなきゃいけないのは、知っていて。けど、きっと目の前にしたらまた悪態をついてしまう。自分が傷つくのを恐れて、相手を傷つけてる。自己防衛でしかないな、と苦笑する。
無性に、千歳の声が聴きたくなった。
これは、逃げだ。米崎さんがダメだからって、千歳に甘えては、迷惑極まりない。
千歳のことを、ちゃんと考えるって、言ったのに、全くできてない。
「はぁぁぁ…」
「…先生ー、キリちゃんが生理だって」
「俺は女じゃないぞ、柳瀬。」
さっきから先生に報告する友達、柳瀬に軽くデコピンする。最近頑張ってクラスの人の名前を暗記し始めてる。まだ半分以上覚えてないけど…。
入学してから何日経ったと思ってるんだ、俺。
ふと窓から外を眺める。
米崎さんは今自由時間なのか、女の先生と校庭を散歩していた。米崎さんの隣は、女性が似合う。でも、いつも切ない目してるもんな、気づいてんのかな、皆。なんてボーッと考える。
…この後、謝らないと。
でも、謝る必要なんてあるのだろうか。
もう、話さないのに。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 48