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再会
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その夜、少し泣いた。
米崎さんのことで泣くのは最後にしようって。
もう、彼のことを考えないようにしようって。
あの、居心地のいい空間は、俺のためじゃなくて、久坂さんのためにあるのだから。
そして、朝。登校しても久坂さんの姿が見えないことにホッとして。米崎さんの顔も、いつも通りだからきっとまだ会ってない。
一日中ずっとそわそわして。俺には関係ないんだけど。…いや、関係なくはないか。
放課後になるまでの時間が長かった。
とにかく、長かった。ずっとそわそわしてたから、体力がわりと消耗されたという。
「…悠」
昨日と同じ柔らかな声が廊下を通った。ちらほらみんな帰っていたが、少し気になって、いや割とか。気になってちょっと教室に残って、もう帰ろうかな、という時だった。
「………り、…お?」
ちら、と見たらとても驚いているような顔。
時が止まったような気がした。
「…そこの子がね、教えてくれたの」
微笑んで米崎さんと久坂さんの後ろを歩いていた俺を指して。
「…ありがと、桐谷くん」
温かな、笑顔だった。
きっと莉緒さん……いや、久坂さんのためにしか、見せないそんな笑顔。切なくも、悲しくもなくて、ただ温かい、微笑み。
「いいえ。」
俺は、精一杯笑顔を作った。
この幸福を、割らないように。
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