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「ねぇ空、皆って言うけど僕は空のこと嫌いじゃないよ
今日会ったばかりだから好きとかもないけど、俺は多分空のこと好きになるよ」
「嘘、僕がどんな人間か知れば絶対に律も離れていくよ」
「そんなの分かんないじゃん
空が何とそんなに必死になって戦ってるのか知らないけど、もっと楽に自分のことだけ考えて生きてみたら?」
自分のことだけ
海のことじゃなくて、自分のこと
「それができたらこうなってないよ、僕だって海みたいに人に囲まれて綺麗に笑って穏やかに時を過ごしてるよ!
僕が人に囲まれるとき、周りの人はいつだって海を僕の向こう側に見てるんだ」
僕だって
できることなら普通の高校生でありたかった
でも僕は海のために生かされてるんだ
海の代わりか、海の世話をするしか周りに必要とされたことがない
「俺は空しか見てないよ
海くんがどんな子かも空から聞いた話でしか知らないし、それに俺は空のことが知りたい」
もう、やめて
そんなに優しい目で見つめないでほしい
目の前の人は、律は、僕の向こうに海を見てない
僕を見てくれてる、僕を嫌わないでいてくれている
勘違いしそうになるんだ
海じゃなくて、僕を、知ろうとしてくれている
そんな馬鹿みたいな勘違い
とにかく律の視線から逃れたくて視線を下に向けた
すると、律は僕の頬を両手で優しく包み込み僕に顔を上げさせた
自然と合った律の瞳は、どこまでも輝いていて明るい
引き込まれそうな黒だった
「空、俺と友達になって
俺は空と、友達になりたい
空のこと、もっとたくさん知りたい」
真っ直ぐに僕を見つめて放たれた言葉は
僕の涙腺を崩壊させるには十分な攻撃力を持っていた
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