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「空」
地を這うような低い声に思わず肩が飛び上がった
ぼーっと海を追っていた目線を恐る恐る母さんの方へ向けると思わず目を背けたくなるような形相でこちらを見ていた
「あなた、海に変なこと言わないでくれるかしら」
「変なこと、って…」
「私があなたに何かしたかしら?してないわよね」
それはさすがに無理があるのではないか…とは思うけど、反論したところで何もメリットは見当たらない
「…はい」
確かに母さんは父さんみたいに目に見えて殴ったりしてくることは少なかった
でも、首を絞められたことは何度も何度もあるし、何よりあのゴミを見るような目が苦手、というか素直に怖い
思い出すと身がすくんで、首がむず痒くなって、思わずさすった
「まあいいわ、とりあえず座りなさい、何度も言ったと思うけど、話すことがあるから」
大人しくリビングにあるテーブルの使われることが極端に少ないからか新品に近い僕の椅子に座った
「単刀直入に言わせてもらうけど、あなたには寮の部屋を変わってもらうわ」
「…え?」
何を言われたのか分からなくて、固まったままの僕に母さんは続けた
「空が盆休み明けから寮に入るのは聞いた?」
声を出そうとしても喉がキュッとしまっていて出なかった
代わりに首を横に振る
「あら、聞いてなかったの
まあ、それでね、同室予定の子がちょっと問題ありで
あの学園の理事長のお孫さんらしいの
それだけなら全然いいんだけど、前の学校で問題を起こして退学になったから理事長さんに無理を言ってあの学園に入ることになったらしいわ」
「そう、なんですか…」
「そんな危ない子と、ただでさえ寮生活に慣れてなくて危なっかしい海が同室だなんて
そんな馬鹿なことさせるわけにはいかないの
でも海はどうしても寮に入りたいって言うから、あなたと部屋を交換しようということで話が落ち着いたわ
あ、もちろん海に不安を与えたくないからこの話は言わないでね」
______律と、同じ部屋じゃなくなる…?
「…ゃ、だ」
「え?」
「いや、です、それだけは」
「はぁ?」
「いやだ!」
「あなた何を言ってるの…
どこに行くの!待ちなさい!空!」
生きてきた中で1番大きな声を出したかもしれない
でも咄嗟に口から出ていたんだ
そうしたら、母さんの顔がどんどんどんどん曇っていって
怖くて、怖くて
恐怖で足が動かなくなってしまう前に
______その場から逃げた
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