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誰もいなくなった教室で、ひとり考えていた。俺なんてここにはもう必要無いんだと。鶴見が消えたように、俺が消えてもこの教室はなにも変わらないだろう。
それなら、消えたほうがいいんだろうか。
──と、馬鹿なことを考えた拍子に、なにげなく机のなかに手を入れていた。
教科書もノートもないガランとした冷たい空間。そこに手のひらを乗せようとしたとき、なにかが指に当たった。
「……ん?」
軽くつついてみると、丸い。くしゅくしゅになったラップのような感触。さらに指を入れると一粒一粒のやわらかな弾力が返ってくる。何度も確認してみたが、それはたしかにここにある。
ラップに包まれた手作りのおにぎりだった。
おにぎりといっても、コンビニのもののように海苔が巻かれているわけではない。ふりかけが混ぜ込んであるわけでもない。
ただの白飯。
手で包み込んでしまえる小ささで、具も入っていないだろう。
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