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sideアサ: 旅立ちの時
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「は、? お前マジで言ってんの?」
「うん。僕は、このギルドを抜ける…っ、」
朝起きて、1番にみんなへ言いに行った
「アサ…自分が何言ってんのか分かってんのか?」
「うん、わかってる。」
「1人になるって事だぞ? 3ヶ月で5千人くらいが死んだ、この世界で!」
「……っ、うん、」
本当は、怖い
3ヶ月で5千人が死ぬなんて、現実世界だったら大事故…大きなニュースものだ
その中に、1人で飛び込もうとしてる
(ほんと、みんなからしたら馬鹿みたいだよねっ、)
ーーーでも、
「もう、決めたから。」
しっかりみんなの目を見て言うと、いつも下ばかり見ていた僕だったからなのか効果覿面でグッと押し黙った
「ね、ねぇアサちゃんっ、もしかして、私の所為…?」
「うんん違うよ。その事が無くても僕は言ってた。前々から考えてたんだっ。」
「そ、なんだ……」
「アサ、本当に抜けんのか?」
いつも笑ってるリーダーが、真剣に尋ねてくる
「はいっ、抜けさせてください。リーダー。」
「はっきり言って、お前弓だしこれから先他のクラスより扱い厳しいと思うぞ?」
「うん、」
「ギルドなんて、もう入れてもらえないかもしんねぇよ?すぐ死ぬかもよ?」
「っ、うん、それでも……、」
それでも、ここで立ち止まってるよりかは、ずっと
ずっと自分の心に素直になれる気がするから。
だから
「……そうか、分かった。」
スッとリーダーの右手が空中で動いて、僕の前にポンっと画面が出る
〝このギルドを、脱退しますか?〟
「自分で押すの嫌だから、お前が押せよ。アサ。」
「……っ、はい。」
「失望した」と言っているかのような、冷たい視線
(笑ってる顔が、好きだったのになぁ。)
好きになりかけていた人から向けられる視線が痛くて泣いてしまいそうになるのを、グッと堪える
(こんな表情をさせてしまってるのは、僕。)
そして隣に居るその子が、きっとこれから支えてくれるはずだから
ーーーだから、大丈夫だ。
スッと指を動かして〝はい〟と表示されている文字を押す
ピロンッ
〝ギルドを脱退しました。〟
「……じゃぁなアサ。
悪りぃけど、フレンド登録はしねぇから。」
「俺たちも辞めとくわ。」
「…うん、分かった。お世話になりましたっ、」
「行くぞ。」と歩き出したギルドのみんなに、ゆっくりとお辞儀をして
頭を上げた頃には、もうその背中は何処にも見えなくなっていた
「ーーーっ、」
(僕は、1人だ……、)
今、ここで僕が死んでも…誰にも分からない。
誰も……何とも思わない。
「っ、ぁ………、」
押さえつけていた恐怖が一気に溢れてきて、震える体を自分でぎゅぅっと抱きしめる
(ちゃんとして僕、大丈夫 大丈夫…っ、)
きっと、これから色んな人に出会うはずだ
嫌な事も…苦しい事だって、いっぱいあると思う
僕の力ひとつじゃ、この世界は何も変わらないかもしれない
ーーーでも、それでも
(進むって、決めたから……っ、)
進んでいこうって
そう、決めたから。
「ーーーーーっ、よし。」
みんなが歩いていった道とは逆方向を向いて
今まではリーダーが引っ張ってくれたけど、今度は自分でしっかり自分の一歩を踏み出して
明日に向かって、走り出したーーー
[旅立ち編]-end-
***
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