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「レベル上がった!」
「おぉぉおめでとう!」「おめー!」
クモの巣洞窟に潜って3日目
僕のレベルは34まで上がった
「後1か〜もうちょいやな!」
「今日中に行けそうだし、飛ばしてくぞ!」
「はいっ、!」
この3日間で数え切れないほどのクモを倒して、なんかもうこういうのに耐性がついた気がする
(これから先気持ち悪いモンスターいても、大丈夫そう…)
3人で連携して倒すのにももう慣れて、僕もスキルを使って2人の望むように動いている
おかげで初めと比べるとサクサク倒せるようになっていて
(あぁ、楽しいなぁ。)
もう少しだけ…2人と一緒に居たいな。
(なぁんて、無理だよね。)
後1つレベルが上がったら、このパーティーは解散
2人専用のギルドへ入れてもらうことも、考えてない。
(リアルでも友だちな彼等の輪の中に入れてってお願いする程、図々しくはないし。)
ーーーだから、
(今を、楽しまなくちゃな。)
レベルなんて上がらなきゃいいのにと変なことを想いながら、きゅぅっと寂しくなる心でしっかり前を向いて
弓をギュッと握り直した
「んん〜久しぶりの空や〜〜〜!!」
レベル35になって洞窟を抜けると
そこは夕焼け色の綺麗な空
「やーば、空気が美味い。」
「ほんとですね。」
(はぁぁ…何か明るい……)
ずっと暗い場所にいたからなぁ。
「ーーーぁ、」
みかんさんが指差した先
空に浮かぶ生存プレイヤーの数が、また減っていた
「…は?減り具合やばくね?俺たち何日潜ってたっけ?」
「1週間も経ってないやろ。それなのに、1000人も減っとる…」
2万5千人から減って、空の数字は2万4千人弱
(こんな短期間で、こんなに減るなんて……っ、)
「なぁ。
思うんやけどさ、やっぱこのゲーム難しいよな。」
ポツリと響く、みかんさんの声
「これまでのどのゲームでも見たことないモンスターとか、攻撃パターンがあるし…多分そういうので皆んなやられてんだろうな。」
呆然と呟かれるように繋がっていく、2人の会話
(いやだ……)
「この先は…もっと険しいよな…死んでいった奴らは、どうやってんのやろか……」
いやだ、いやだ
「わからねぇな。でも、死にたくないな………」
(っ、やだ…、)
「ーーー死にませんよ。」
ハッと驚く2人の手をキュゥッと握って、安心させるように笑ってみせた
「りんごさんもみかんさんも、絶対死にません。PSだってあるし、何よりチームワークいいじゃないですか。それに、この世界を楽しんでるみたいに毎日を過ごしてる。
だから、きっと大丈夫です。」
「「ーーーっ、」」
(2人は、大丈夫だ。)
この世界になんか、絶対負けない。
だから、明るい2人には前を向いていて欲しいと思う
弱気になんか、ならないで……
「っ、ははは、俺らがアサを助けたんにな。」
「本当に。いつの間に逆になってるわ。」
手を離されて、ポンっと大きな手が2つ頭へ乗る
「なぁアサ。フレンド登録してもいいか?」
「ぇ、」
「何かここでさよならは嫌やなぁと思って。これからも時々会おうや?」
「駄目か?」
「っ、いい…んですか………?」
「勿論!」「寧ろ俺らから誘ってんだし、よろしくな。」
2人の手が空中で動いて、ポンッポンッと耳にシステムの音が響く
パッと僕も手を動かして自分のフレンド欄を見ると、そこには〝りんご〟・〝みかん〟と名前が入っていて
「ぁ、………っ、」
初めての、フレンド
ーーーこの世界で初めての…友だち。
「は、?」「お、おいアサっ?」
「〜〜〜っ、うぇぇ、」
〝自分のデータの中に2人の名前がある〟
それだけで、これまで1人でやってきた緊張の糸が緩んで、安心と嬉しくて胸がいっぱいになってしまって…
(僕、もう…1人じゃないんだ……っ、)
なかなか涙が止まらない僕を、2人はオロオロしながら頭やら背中やらを撫でてくれた
「じゃぁ、僕先に行きますね。」
泣き止んだ後少しだけ会話して、別れが寂しくならないよう先に立ち上がる
「ん、わかった。俺ら目的一緒だからさ、フレンド欄から連絡取り合わなくてもそのうちまた会えると思うぞ。」
「そうやな!もしかしたら次のID前でまた直ぐ会えたりしてな。」
「クスクスッ、そうかもしれませんね。」
スッと手を差し出すと、すぐに2人の手が重ねられた
「本当に有難うございました。出会えて良かったです。」
「そんなんこちらこそやで。アサと出会えて良かったわ。」
(嗚呼…あったかいな。)
重ねた手に、3人でギュッと力を込める
モンスターからの攻撃は、どれだけダメージを受けても全然痛いと思わない
感覚が無いように作られているからだ
でも、プレイヤー同士で触れ合う分には感覚がある
今もこうして繋がれた手は…とても暖かくて。
「じゃぁ、行きますね。」
「アサ、なんかあったら直ぐに連絡しろよ。」
「またこの洞窟みたいに無茶なんかすんなな!やばかったら俺ら呼ぶこと、いい?」
「はいっ、」
心配されることが…こんなに嬉しいなんて初めて知った。
「絶対死ぬなよ。」
「はい。りんごさんとみかんさんも。」
「ん。この世界には負けんわ。」
ニヤリと目の前の顔が笑って、それにつられて僕も笑って
「それじゃぁ、また。」
ふわりと、手が離れ
また涙が出る前に、グッと前を向いて全速力で走っていった
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