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シキは逆読みすればキシだよね
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夕日が沈み、あたりは照明以外闇と静寂が支配していた。
暖かくなって気とはいえまだ日が沈むと寒くなる。
二人の間もまた、冷たい空気がしんと支配していた。
二人が座るブランコの隣にも、照明は立っている。
志希の後ろにあるから、葵の顔がしっかり見える。
ずっと俯いていたからわからなかったが、彼の目は意外に大きくて、そして芯の強く汚れのない目をしていた。
闇を知らない、俺たちのような汚れを、何も知らない、純真無垢な、強い瞳…
「選別…してるように見えた?」
さっきより低い、消え入りそうな声で問いかける。
会った時間は短い。
けれど、いつもと違うとも言い切れない。
やっと、もう一つの、本当の顔を見せてくれた。
そんな気がした。
「気分悪くしたならごめんなさい。でも、なんか違って見えたんです。僕を見る顔と、クラスメイトを見る顔と、店長さんや先生を見る顔が、なんだか違うようにみえて…」
「そっか…まだそう見てたんだ…」
悲しそうな声だけが聞こえる。それは返事というよりも、思わず口に出てしまったようだった。
「気分悪くしたなら悪い。昔、親父もお袋も誰も信じられなくなっちまってた事があってさ。けど、ガキだからどうしたって一人じゃ生きていけないし、限界はある。だから敵が味方かを見分ける必要があったんだ。いや、敵味方じゃなくて、利用できる出来ない…の間違いだな…」
苦笑しながら話す言葉は、反抗期を迎えた子供よりも、それとは違うおもいをもっている気がした。
冷たく突き飛ばすものとは違うが、それでもどこか拒絶しているような雰囲気を持つ。
今まで見てきた彼とは違って見えた。
公園に来た時、ブランコに乗り話し始めてからをしてから、葵はずっと、彼の目を見ていた。
最初の挨拶の時やバイト先の時ですらすぐ顔を背けていたはずなのに、今は逸らさずまっすぐ見つめてくる。
穴が開きそうになるほど見つめられるのに苦笑して、自分の本心を、気持ちの一部を伝えた。
その目がまた逸らされたり、軽蔑されたりするだろうと思っていたが、予想外になにも変化はなかった。
目を逸らさず、強い光を持った目を彼に向ける。
「…まだ、怖いですか?」
彼の目と同じように強く、しかしこちらを心配してくれる、優しい雰囲気を持った声。
彼の目を見るのはつらくてさりげなく目を逸らしつつ、それでも笑顔が溢れてで、口元で笑みを浮かべながら答えた
「怖くないって言ったら、嘘になる。けど、信用して良いんだって思える人がいるのはわかったしね。それに、あの時よりは俺たちも力ついたから、大丈夫だ」
半分は嘘で、半分は本当。
何故かそう思えて、でも具体的には何が怖いのか平気なのかがわからない。どれが本心なのかわからない。だから親友はあんな風になってしまったのだろう。
でも彼よりは、確信をつけることができる。
「それに、アオは大丈夫だよ。アオはきっと、俺たちの敵になることはないから」
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