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時計の歯車
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PM 19:40
圭は急ぎながら、錆び付いた階段を上がっていた。
少し寝坊をしたのだ。
だからと言って時間に問題は無いのだが、覚える事は山程ある。せかせかとした気持ちを落ち着かせるようにパン、と頬を軽く叩いた。
昨日までは東條とゆっくり過ごしていたのだが、今日からまた仕事が始まる。
月曜だからと油断は禁物だ。
休みを挟んだせいで、少し緩んだ気持ちを引き締めながらも、グッとETERNALのドアを開けた。
いつものように可愛らしいベルの音が鳴り、それに気付いた徹が圭に挨拶をする。
「あ、圭くんお疲れ様。なんか一日会わなかっただけなのに、久しぶりな感じがするね」
「お疲れ様です。本当だ・・・なんか変な感じです。」
「確かに・・変な感じは分かる気がする」
そう言って徹が笑いながらグラスを拭く作業に戻った事を確認すると、圭はバックヤードへ入り着替えを済ませる。
カウンターへ出て、メモを見ながらボトルの形や名前の暗記作業に没頭していると、"ねぇ"と徹から言われ、顔を上げた。
「実家からトマトが大量に送られてきて、1人では食べきれないし、お客様に提供したいんだけど、何か作れる?」
酒のつまみになるようなトマト料理と言えばなんだろう。とすぐに頭を回転させる。
「んー、カプレーゼとかですかね?でも今モッツァレラチーズ無いですよね?」
「そうだね、モッツァレラチーズは無いね・・・。買いに行ってもいいんだけど、チーズは今少し高いから他のだと助かるなぁ」
「あ、じゃあ。チーズがなくても、マジックソルトとオリーブオイルかければ美味しく食べれると思うんですけど、トマトは今冷えてますか?」
「うん、冷蔵庫に入ってるから冷たいよ」
「それなら大丈夫です!美味しくなりそうです」
「それなら良かった・・あぁ、圭君に居てもらえて本当に助かるよ・・・俺一人じゃ、あの量を始末しきれない・・」
そんなに大量なのだろうか。
困ったように呟いたその姿が何だか可笑しい。
普段は結構クールに見える徹なのだが、こういう一面もあるんだ。などと感心をしながら時計を確認すると、オープン時間の5分前。
徹に"表の看板変えてきますね"と声を掛け、CLOSEをOPENに変えた。
今日も一日が始まる。
よし、頑張らなくては。
と気合を入れ直し店内へと戻った。
それからしばらくし、客がチラホラと店へ入り始める。
それを確認すると圭はキッチンでトマトを切り始めた。
大体8個ほど切り終わった頃だろうか。
徹から"圭くんちょっと来て"と声が掛かり、ホールへと顔を出す。
多分お客さん関係だろうな。
と思いつつカウンターに目をやると、鶴橋がにこやかに手を振っていた。
「やあ、圭くん。この前振りだね。」
「鶴橋さん、いらっしゃいませ。来て下さったんですね、嬉しいです。あれ、今日はスーツなんですね?」
「名前を覚えてくれていたんだね。私こそ嬉しいよ。あ、そうそう、会社の帰りなんだけれども、今日は部下を連れて来たんだ。こいつに君を見せてやりたくってね」
鶴橋はそう言うと、隣に座っていた男性の肩をぽん、と叩いた。
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