アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第2章
-
ただいま、数学の授業中。
いつも通りの教室、いつも通りの教師で、
いつも通りの調子で行われている。
しかし、七瀬は滅法、
居心地が悪かった。
右後ろの席から、絶えず視線を感じるからである。
そう、なぜか、
何故か、何故か数学の授業に、
御船さまが、出ているのだ。
…こんな言い方はおかしい気もするけど。
あのサボリ魔の御船が、あの遊び人の御船が、である。
ここ最近、数学だけでなく、
毎日、ほぼ欠かさず、どの授業に出席している。
3組の人間から見ると、これはものすごい
快挙なのだ。
女遊びも控えめ、授業にも真面目に出る。
同学年の者は、口々に何事かと噂している。
まあ、七瀬には、
その心当たりが、全く無いわけではないが…
…例の図書館勉強の後、御船は、
『このままの勢いだと、俺はすぐ委員長の地位を追い越しちまいそうだな。』
…などと、浮ついた事を言っていたので、
『そういう偉そうな事は、
出席日数と単位を余裕でクリアしてから言え。』
と、七瀬がピシャリと言ってやったのが多分、
原因でないかと思う。
あの後から
御船は鼻歌を歌い、軽薄そうな表情で、椅子にもたれ掛け、脚を組み、机を指でトントンと小さく独自のリズムを刻みながら、授業を受けている。
…何様かと言われれば、
御船さまさまである、といった調子で
今日も授業に臨んでいる。
「出席番号32番御船 徹!では…この問題を解いてみろ!!」
下腹をたくわえた数学担任の大垣(大垣)が、
野太い声で、御船を指す。今日は7月なのに、
夏真っ盛りと言わんばかりに暑いため、
少々体が大きい大垣教諭は、いつもより若干ご機嫌ナナメだった。
故に、御船を指した声にも幾分、棘があった。
御船は、変わらず、朗らかな声で返事をして、黒板にスルスル歩いて行く。
「はい。この問題ですね。」
カツカツカツカツカツ…
いつぞやのシャープペンの音に負けず劣らず、
憎々しいほど、さらさら問題を解き、カツン、とチョークを置いて、大垣教諭に向き直った。
顔には相変わらず、端正な笑みが妖しく称えられている。
大垣は、三角にしていた目をまん丸くして、
抱きつかんばかりに叫んだ。
「正解だ!!今のはテストにも出題する公式を使った応用問題だぞ!?御船、お前よく解けたな!!凄いぞ!!…先生は感動した!!
…頑張ったんだなぁ、御船!!」
ナナメが治ったどころか、最終的に涙まで流し始め、クラスの者たちも、それぞれに感慨に耽っていた。
ーーーあの御船がねぇ…!
ーーー変わったもんだ、遊び人から一気に秀才か?
「かっちょいーな、七瀬!やるじゃん!」
只倉も教科書を丸めてふりかざしながら
喜んでる。
教室内がどよめき立つ中、
ただ二人を除いては、教室は目新しい日常に興奮と興味を示した。
ただ、二人。
にやけた顔で、七瀬に視線を送る御船と、
そんな御船を、苛立たしげに睨み返す七瀬を除いては。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 164