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第2章
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「御船〜、お前ってば、
最近どうしちゃったの?
数ヶ月前とは、まるで別人だな。
一体どういう風の吹き回し?」
「さあ、どうだかな…。
どうなんだろうなあ、なぁ、七瀬。」
ーーーおれに振るな。
休み時間、目の前で繰り広げられる世間話に
七瀬は辟易としていた。
やるんなら、おれの席から遠く離れた所でやって頂きたいと、嫌悪のオーラを容赦なく放っている。
そんな七瀬の態度を知ってか知らずか、
只倉は陽気に続ける。
「噂によると、御船には本命が出来たって話だけど…、あれ本当なのか?」
「本命ね…、まあそういうことにしとくか。」
からかうような口調で、御船が答える。
「ええーっ!!マジかよ!
あの只倉をマジにさせる女がいたのかよ!!
すっげえな!で、相手は誰なのよ?!」
「さあ、誰かなあ、誰なんだろうなあ、
なぁ、七瀬?」
ーーーああ、イライラする。
まとわりつく御船の視線と、絶対絡まぬように
七瀬はずっと、険しい顔で窓に目をやっている。
そんな七瀬を見て、さらに御船が笑いを上げる。
「何だよ〜、教えてくれてもいいじゃん。
俺別に誰にも言わねーよ?」
「まあまあ、只倉
時がくれば、いずれ嫌でも分かるさ。」
必死で聞かないようにしているにも関わらず、
耳はしっかり御船の声をキャッチしてしまっているのだから、タチが悪い。
ーーーだから、絶対、ダメだと思ったんだ。
七瀬は、気付かれぬようため息をつく。
この男を好きになるのは、絶対嫌だと思った理由の一つがこれだ。
いつだって思わせぶりで、大事な事は何一つ読めない。
いや、そもそも大事と思っていることがあるのかどうかすら疑わしい。
こうして話している事だって、
明日になれば『そんな事言ったっけ?』といった感じで、はぐらかすかもしれない。
こういう相手に心をとられることが、どんなに不毛で危険か、恋愛経験のない七瀬にだって
痛いほど分かっていた。
近づくのは自傷行為だということも。
ーーーわかっていたのに…。
「まあ、良いや。
おいおい聞いていくさ、とりあえずこれから
よろしくな!御船」
「ああ、仲良くしてこう。」
ーーー何がよろしくだ、何が。
「よろしくついでに、なんなんだけどさ!
御船、女の子の知り合い多いだろ?
誰か俺にいい子紹介してくれない?」
ーーーお前はそればっかりか。
「なんだ、只倉、彼女募集中なのか?」
「うんうん、随時募集中!
なんなら御船の好きな女の子も連れてきて
ダブルデートでもしようぜ!!」
「ダブルデートは多分、
現時点では難しいが、合コンならセッティングしてやっても良いぜ。とびきり可愛いオンナノコ紹介してやるよ。」
「ぃやったぁーー!!
ありがとう、御船!愛してる!!」
ーーーほら、みろ。
舌の根も乾かないうちにすぐこれだ。
「なぁなぁ、じゃあ、七瀬も行こうぜ!ゴーコン!!」
只倉のきらきら光る目が、げっそりした七瀬に向けられる。
「…行かない。」
窓の変わらない景色を追い、只倉に冷たい声をかえす。
「まあそう言うなって!!
たまには異性との触れ合いも大事だぞ!
お前ってば固すぎるんだから!
それに、御船と親交を深める意味でも…」
「深めない。」
「え?」
「おれは御船と仲良くなるつもりは毛頭ない。」
只倉のきらきらした目が、あちゃー、という顔に変わる。そして申し訳なさそうに御船を見た。
「…悪いな、七瀬ってば、素直じゃないんだ。
悪い奴じゃないから、許してやってね?」
「大丈夫、分かってるよ。」
くつくつ笑いながら、御船が答える。
心底愉快だと言わんばかりに、肩を揺らす。
ーーーお前がおれの、
何を分かってるって言うんだ、何を…。
七瀬は、ガタリと席を立つ。
只倉が慌てて声をかけた。
「あぁっ、おい、どこ行くんだよ七瀬!」
七瀬は戸口まで歩いて行き、振り返りざまに、
一言だけ吐き捨てた。
「トイレ。」
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