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第2章 side 御船
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「…で?」
「で?って何よ。」
「どうだった?」
誰もいない屋上の壁に背をもたせながら、
御船は隣にいる長倉に問いかけた。
長倉は空を見上げ、いちごオレを飲みながら唸った。
「べっつに〜、
お前は意外と肝心なときに、
奥手ちゃんなんだと分かっただけ。」
「用意周到と言ってくれ。」
御船が鼻で笑う。
長倉は古馴染みの友人を横目で見ながら、
大袈裟にため息を吐いた。
「お前しかし、鬼畜だねえ。
あんなタイプのオトコノコを、
追い詰めるような真似をして…。」
「仕掛けてきたのはあいつだぜ?」
「そう仕向けたのはお前だろ。」
御船は顔をしかめる長倉を見て、ニヤリと笑う。
長倉はやれやれと言った風に首を振る。
「七瀬くんもお気の毒。
こんな男の標的にされてしまって…。
ああ、可哀想。」
「それはどうかな。」
御船はまだ、愉快そうに肩を揺らしてる。
「そうだよ。
…お前さぁ、ホント気をつけろよ。
これまでにお前が遊んできた反動が、七瀬くんに降りかからないとも限らないんだぜ。」
「大丈夫だ。
俺がついてるんだから。」
「……。」
断言する御船に呆れながら、
長倉は、空になった紙パックを横に置き、
気だるそうに寝転んだ。
「…まあ、たしかに、キレーな顔した
いじらしい、可愛らしいオトコノコだったから。
トオルに泣かされる事があっても、
きっとまた他の誰かがそれを慰めてくれるだろう。俺も万が一の為に、アドレス教えといたし。」
フッと、御船の視線が強くなる。
長倉は青空に向けた視線を、再び、御船に戻した。
「ダメだぜ。」
御船の顔はもう笑ってない。
「あれは、俺のだ。」
御船の瞳が、キラリと黒く光る。
ーーーあれは、俺の。
俺の中で身悶えた身体も、拒絶しているように見せかけている心も。
もう全部、俺のものだ。
「…分かってるよ、トオル。
別にそういう意味じゃねぇ。
…睨むのやめてくんない?」
その声に、御船はひと息ついて、
天を仰ぎ、あの日を思い出す。
あの雨の日。
七瀬が、最初に御船の元へ堕ちてきたあの日。
ーーーお前だって、もう言い逃れなんて出来ないだろう?
抵抗する手も、睨む目も、
縋り付きたくて震えていたくせに。
未だに拒絶するキスだって、
する前からすでに身体を熱くしているくせに。
ーーー俺が気付いてないとでも思ってるのか…。
あの強気な顔を思い出し、また笑みがこぼれる。
確かにそうだ。
いじらしい。
可愛らしい。
まだ、
御船から逃げようとしている所も。
自分で自分を追い詰め、傷つけている所も。
そんな想いに反して、
反応してしまう身体と心も。
悔し涙も。
全部、全部。
狂わせたい。閉じ込めたい。抱き通したい。
ーーー早く。
早くそのまま、
俺の元へと、堕ちてこいよ…、七瀬。
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