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レポート
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side 紬
先程からチラチラと視線を感じる。
もう一度こちらを見るのを待って目を合わせてあげる。
まぁ、予想通り。
目を合わせたまま何も言わない。
『疲れた?』
「ん。」
短い返事の後、俺の膝になだれ込んできた。
『どうしたの?』
少し驚きながら聞く。
「紬さんタイム~。」
なるほど。
行き詰まってるのね。
『休憩しようか。』
ソファに並んで座る。
直はアイスコーヒーを両手に握って、もたれかかってくる。
「眠い。」
少し珍しいくらいに甘えてくる。
『どう?終わりそう?』
「ん~、あと3分の1……いや、半分くらいかな。」
多分、本当はもっと書けているだろう。
「あ。」
『ん?』
「紬さん、教えてください。」
ノートPCを膝の上に載せてきた。
本当に珍しく一方的だ。
可愛い。
『とりあえず見てやるけど、多分そんな大したこと言えないよ。』
おや。
直は言葉を扱うのが苦手だから、てっきりレポートも苦手だろうと思っていた。
意外。
簡潔でわかりやすく、綺麗にまとまっている。
その上、繊細な表現で魅力的な文章だ。
確かに、直らしい文章なのかもしれない。
『これ、いつ提出なの?』
「えっと~、来週の木曜日です。」
『じゃあ、ゆっくりしながら考えたらいいよ。』
きっと、俺があれこれ言うより、直が最後まで考えた方が、直らしいレポートになる。
『そうしたら、続きの言葉も出てくるよ。』
直の手からグラスを取り、コーヒーを飲み干す。
『お昼寝しよう。』
「紬さんのレポートは?」
『俺も眠かったから。』
「………嘘。」
素直に流されたら良いのに。
笑いがこぼれる。
『今は直とお昼寝したいの。これは本当。』
直の前髪を掻き上げて、額にキスを落とす。
ね?と手を取れば、緩く握り返してくる。
『紬さんに教えてもらいたかったのになぁ。』
ベッドの中。
胸に顔を埋めた直が呟く。
言葉を扱うのが苦手だと思っていた。
でも、そうじゃなくて。
とても大切にしているから。
話す度に、丁寧に、大切に言葉を選んでいる。
一生懸命話している。
そう思うと可愛くて。
愛おしくて。
たまらない。
『大丈夫だよ。そのままで。』
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