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下校5
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冷静になったのは、最寄駅を降りて家に帰る途中のことだった。
え、付き合うって何?しかも僕は練習台?
どこまですればいいの?いつまで付き合えばいいの?
色んな謎が頭の中をぐるぐるぐるぐるとまわる。
考えていると、急に頭をぽんっと叩かれた。立山先輩の手だ。
「どうしたんだよ。んまあ、急に男と付き合うっつっても受け入れられねぇところもあるか。大丈夫、これ、ガチなわけじゃねぇし。お前が嫌ならすぐやめるし、体触ったりとかはさすがにしねぇから」
カラダ、サワッタリ
その一言で、急に視線がふらつく。あの日の光景が鮮明な映像となって、脳内に再生される。
助けて、助けてよ
「お、おい。大丈夫か?」
「きも、ち、わる」
立っていられなくなって、道路にしゃがみこむ。
太ももに添えた手にぽとぽとと雫が落ちているのをみて、今僕は泣いてるんだと気がついた。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…
「たす、けて」
その時、しゃがんだままの僕の体が抱きしめられた。
不思議と怖さはなくて、かわりにあったかい。懐かしい匂い。
「郡山、大丈夫、大丈夫。確かに今お前の周りの世界はお前に優しくないかもしれないけどな、もう俺が守ってやるから。そのために俺は」
そこまで言いかけて、立山先輩は口をつぐんだ。
もう恐怖よりも、気持ち悪さよりも、その続きが聞きたくて僕は顔を上げた。
「そのために立山先輩は、なんですか?」
「そのために俺は、な…なんでもねぇよ。もう大丈夫ならとっとと帰んぞ」
立山先輩に抱き起こされて、なんとか立つ。
歩き始めようとしたら、僕の手を立山先輩の手がしっかりと握った。
「あ、あの、手」
「こんくらいいいだろ。俺たちは仮にでも恋人なんだから」
先輩の手がとても心強くて、もう1人で立ってる気はしなかった。
ひとりぼっちじゃない。
こんな感覚、久しぶりだな。
そう思いながら、一歩一歩踏みしめて、僕たちは恋人になってはじめての下校をした。
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