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デート予行4
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ふわふわした世界からだんだんと意識に輪郭が浮き出てきて、まずは自分の手を何かあたたかいものが包み込んでくれていることに気がついた。
次に目を開けて、見知らぬ天井が見えることに気づく。
そこで意識が途絶える前の記憶が脳裏をよぎって、確か僕は先輩の家に2人で向かっていたんだと思い出す。
そうだ、そこで岡田くんと滝沢さんに会って
「先輩、どこ…たすけて」
岡田くんと滝沢さんに、攻撃される。
見つかったら、それこそ心が殺されてしまうかもしれない。
大袈裟じゃなく、本当にそれくらいの恐怖を感じていた。
「郡山大丈夫、俺はここにいる」
「あっ。せん、ぱい」
「ここは俺の家だ。もうお前を傷つけるものは何もない。安心しろ」
その一言に安心したのか、先輩の優しさに感動したのか、みるみる目の淵に涙が溜まっていく。
「せんぱ、い…先輩、たて、やま先輩」
「おう。怖かったな。もう大丈夫だからな」
ここには、優しい先輩がいる。
ここにいるうちは、もう僕は傷つかなくていいんだ。
クラスメートの影に怯えて歩けなくなったり、人の笑い声を聞いてビクビクしなくてもいいんだ。
先輩が手を握ってくれる。
それに縋るような思いで、手を自分の胸に抱き寄せた。
「先輩、だいすき。一緒にいて」
先輩が一緒にいてくれるから、僕はひとりぼっちじゃなくなった。昼休みも帰り道も、先輩がいたから。
逆を言えば、先輩がいなかったら僕はまたひとりになるんだ。ただのいじめられっ子になる。
「お願い、先輩…ずっと一緒にいてよぉ」
先輩がいなくなってしまうのが怖くなって、子供みたいに泣き出してしまう。
「俺だってずっと一緒にいれるもんならそうしたい。泣かなくても、俺はお前のそばにいるから」
そう言った先輩の顔は、とても、とても優しかった。
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