アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
自覚2
-
ガラガラ
保健室のドアを乱暴に開けて、どうしたのって心配してくれる遥先生も無視して、奥のパーテーションを抜けた先のベッドにぼそっと入り込む。
立山先輩が、モテていた。
恋人なんだから帰りくらい送らせろよ、なんてキザなセリフ吐いて、告白も愛しているとかすっごい重くて。
そんな先輩が、モテていた。
じわぁっと目の淵に涙が浮かんで、それを枕が吸収する。
「立山先輩の、バカ。バカバカバカ!」
今は僕と付き合ってるくせに、体育祭で活躍してモテるつもりなんだ。
そりゃそうだよね。立山先輩の好きな子は女の子なんだし、モテたいに決まってるよね。
部活対抗のリレーにも出るのも、そうやって女の子にモテたいからなのかもしれない。
ガラッと扉が開いた音がした。
「おい郡山。ここにいるのか?どうした、大丈夫か?」
立山先輩だ。
今すぐ、先輩のバカって泣きつきたい。だけどそんなことできない。
だって、どうしてこんなにムカついてるのかも分からないから。
「ナツ、郡山くんの様子がおかしかったけど」
「俺にもわかんねぇよ。奥にいるのか?」
「うん」
2人のやりとりが聞こえて、2秒後。
僕と先輩を隔てていたパーテーションがずらされた。
「郡山どうした?何があったんだよ」
「ぅ、うぅ…ばかぁ!立山先輩の、ばかぁ!!」
泣いてる僕を見て、先輩がふわっと抱きしめてくれる。
今まで意識なんてしてこなかったけど、先輩の匂いがいっぱいに広がって、ドキドキする。
「ごめんな、郡山。俺、お前のこと傷つけちまったみたいだな」
理由も話してないのに先輩は謝る。
そんな優しいところも、モテる要素なのかもしれない。
ムカつく。
「たて、やま先輩なんてっ…ぅ、きら、いだ!」
「ん?そうか嫌いか。俺はお前のこと、好きだけどなぁ」
「…すき?」
好き、の2文字だけで、今までの泣きたい気持ちも全部吹き飛んで、一気に胸がばくばくする。
好き。立山先輩が僕のことを、好き。好き。
「ほん、とうに?」
「あぁ本当だ。だって俺はお前の彼氏だろ?」
「彼氏、なんていっても…先輩、本命いるくせに」
立山先輩なんか大嫌いだ。練習で僕と付き合おうとして。
毎日帰り道送ってくれて。
怖かったら手を繋いでくれて。
教室でのことを聞いて、守りたいって言ってくれて。
部活の時は自分にも他人にも厳しくて。なのに僕には今みたいに甘いところがあって。
2年A組っていう、新しい居場所を用意してくれて。
僕の話をいつも真剣に聞いてくれて。
そんな立山先輩に本命がいるだなんて。僕はその本命さんのための練習台だなんて。
考えるだけで胸が張り裂けそう。
「どう、しよう」
「ん、どうした?」
「ぼ、ぼく…気づいちゃ、いけないことに、気づいちゃった」
どうしよう。
僕は、立山先輩のことが、好きなんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 97