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― ep.1 ―(3)
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それは、
初回は楽しいと錯覚していた英語の授業が別に楽しくないと気付き始めた、
3回目の授業中のことだった。
時計を見るのにも飽きてしまい、視線を窓の向こうに移した時。
グラウンドでは2年のどこかのクラスが体育でサッカーをやっていた。
「(あ……あれは)」
その中に、あのギリギリ校則範囲内の明るめの茶髪を見つけた。
間違いなく「あの人」だ。
ちょうど今試合の決着がついたところみたいで、
なんか喜んでいるから勝った方のチームなのだろう。
あのクラスは熱い人が多いのか、
勝利チームの奴らがハグやら何やらで思い思いに喜びを表現している中、
「あの人」は全員とテンション高くハイタッチをして回っていた。
「(今日も元気だなぁ……)」
そんな他愛のない風景に、俺はすっかり見入っていた。
そして、すっかりBGMになった英語の授業を遠くに聴きながら、
自分自身のことを思い返してみたりしていた。
「俺」という奴は、極端に大人しくも騒がしくもない、
本当に普通の奴なんだと思う。
誰に注目されるでもなく、だいたいいつも教室のどこかの一角で、
気の合う何人かの仲間ととりとめのない話をしてまったり過ごす。
幼稚園からずっとそんなもんだ。
どこのクラスに入っても、
必ず1人は「いつもみんなの中心に居る人」という奴は存在していて、
そういう奴はだいたいみんなイイ奴で、
一緒に居ると確かに楽しいし、人気があるのも頷けた。
しかし、そういう奴が得意か苦手かと問われれば、
どちらかというと苦手と答えるしかなかったと思う。いや、今だって。
たとえば今グラウンドの中心に見えているのが「あの人」じゃなく、
あの“ポジション”に居る別の誰かだとして、
俺は周りの「喜んでるチーム」の1人だったら、と考えると……
あんなふうに「イェ~イ!!」ってハイタッチなんか求められたら、
嫌ではないけどちょっとだけ怯んでしまうと思う。
決して嫌いではないのだけれど。
そんな立場の人を、こんなふうに目で追ったり、
時間を忘れて見入ったりしてしまう自分が居ることが、
何だか不思議だった。
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